捏造 息子話 vol.1







↑の破壊力ありすぎる素晴らしいイラストからうっかりと派生した「未来」のお話です。
(こちらはネット上で出回っている画像なので、暫し拝借をば。そのうち消します)
誰かさんが鳴海さんちに居候しています。
今回は一番こちらに届いた叫びが多かった「ライ修羅前提バージョン」ですが、
色々なパターンで派生していく予定ですので、またご希望をお聞かせください。







「縛」

背中から襲い掛かってきた妖魔の動きを。
ただ一言で、止めた美しい少年は、にこりと笑んで、コツリコツリとその囚われたモノへと近づく。

「オ、お前、な、ナニモンだぁ?!」
「知らずに襲い掛かってきたの?・・・おバカさんだねぇ」

まさか君じゃないとは、思うけれど、念の為に、確かめさせてもらうよ。
謎を含む言葉を投げて、
黒い学生服に身を包んだ少年は右手に持ったロザリオを妖魔へと触れさせる。

「ギャアァァアァァッ」
ジュウと、焼きごてを当てたかのように、その醜い身体から発生する煙と異臭に頓着せず。
ふん、と。少年はくだらなそうに、息をつく。

「反応、なし、か。・・・まあ、君みたいなバカが持っているわけは、無いか」
「な、何のことだぁ・・・?」
「君は、知らなくて、いいことだよ。おバカさん」

「delete」と唱えたその一言で、瞬時にその場から消去された妖魔は、あの世の土産に見る。
灰色に見えていた少年の瞳が、血よりも赤い朱の色に染まるのを。





◇◆◇




お前、また、戦ってきただろう?
「へぇ、分かるんだ。鳴海。伊達に怪異専門の看板出してないねぇ。」

こら、一応、父さんって呼べって何度言えば。
「はいはい。じゃあ、鳴海トウサン」

ホント、こいつ誰に似たんだろうなぁ。強いわ怖いわ可愛いわ綺麗だわ、でもどっかルーズだわ。
「ああ、それ最後のはトウサンに似たんだよ」

ええ?ライドウにか?! あいつ、そんなルーズだったのか!?
「・・・自分でトウサンって呼べって言っといてー。ホント鳴海は仕方ないんだから」

・・・。あ、そ、そっちか。そ、それより、どうだ。集まったか?
「まあまあ、かな。今で、ルイと合わせて500ぐらい」

お前が俺んとこに来てから、もう2年、いや3年か。・・・がんばったな。
「そう、だね。でも、後は相当、気合を入れて隠れてやがるから、難しいけど」

シュラちゃんとライドウは、どうだ?
「変わらない、と思うよ。ルイの宝物庫の最奥で眠ってる。氷の棺に入って」

・・・そっか。
「でもさー。年に一度しか会えないけど、綺麗だぜー。透き通った氷の中の母様」

うっとりと呟くその少年の、母親への強すぎる愛情の色は、彼の美しい父親を彷彿とさせる。

罠に嵌ったお前を助けるために、力を使い果たしたんだったっけ。
「壊れる寸前に間に合ったライドウが庇ったからさ。どっちもギリギリで命は助かったけど」

ほぼ全部の力を奪われて、仮死状態、か。
「だよー。お陰で俺がアイツの分まで回収しないといけない」

おいおい、さっきから。ライドウのこと、こそ、父さん、って、呼んでやれよ。
「やだよ。だーって。アイツ、俺の永遠のライバルだもの」

へ?
「母様は俺のモノ、だからさ」

は?
「まー、アイツも助けないと母様が悲しむから、仕方ないから回収するけどさ」

あ?
「それでも母様は俺のモノだから。実の親だとかそんなこと、魔界だからカンケーないし」

裏切り者に奪われた欠片を全部集めて、アイツ復活させたら、
今度こそ、決着つけてやるんだから。
と。
キラリ、ときらめかす瞳の色は金色。
おいおい、冗談じゃなくて、マジかよ。と焦った鳴海が止めた息は。

大体アイツさ。確か、6歳の俺にだよ、マジで攻撃仕掛けて来たんだぜ。ちょっと、1週間ほど母様を独り占めしたぐらいでさー。

はああ〜と、深い深い溜息になって落とされる。
(・・・ライドウ、お前、相変わらず、シュラちゃんのことになると、何て大人げの無い・・・)





◇◆◇




ある日、突然、訪ねてきた、どこかの誰かさん達に酷似した少年。
ああ、アイツら、幸せになったんだ、と、思わずホロリとしながらも。
でも、どうしてこの子だけが、と思った鳴海は。
事情を聞かされて、ずるずるとこの帝都でのその子供の保護者になる羽目となった。

まあ、保護者っつっても。こいつ、子供のくせに賢いわ家事はできるわ料理も上手いわ。
おまけにどうやらどっちの両親の仲魔も味方につけているみたいで、その辺の野良悪魔なんか瞬殺・・・いや、違う意味でも瞬殺、していたな。「道を歩けば、悪魔が落ちる」みたいな感じか?
ヤタガラスの報告だと、このあたりの悪魔、ほぼ全員、下僕状態らしいもんな。ってことは。
どっちかっつーと、俺がコイツに保護されてるんじゃねーの、と鳴海は頭を掻く。


「666個、か。天界に唆された裏切り者が隠した、お前の両親の力の欠片」
「魔界はルイに頼んであるから、人界は俺が担当っつーことで、ね」

まあ、このロザリオを触れさせれば、自然に回収するようになってるから、後は、見つけるだけ。
この辺りで、俺に適う魔物なんて、居ないしね。と。

クスリ、と落とす凄絶な笑みは、どっちの親譲りなのかは知れないが。
・・・確かに、お前に適う魔物は居ないよ、最強だよ、お坊ちゃまと、鳴海はまた溜息を落とす。

「安心してよ、鳴海トウサン。見つかるまではトウサンの仕事も手伝うしさ」

母様に会えないのは哀しいけど、俺、こっち結構好きなんだ。
キチョーさんも面白いし、雷堂オジサンも誰かと同じ顔してる割にはめっちゃいい人だしー。
あー俺、雷堂オジサンが父さんだったら、もっと楽だったのに〜。

「つーか、母様って、趣味悪いよね。何であんな性格破綻者があんなにいいんだろ?」
ねーどー思うー?鳴海オトーサンー?

その性格破綻者そのままの性格に、母親譲りの破壊的愛嬌をトッピングさせた最強の魔物は。

そのどうしようもない質問に、もう声も無く脱力した哀れな鳴海トウサンの頭を、つん、とつついた。










Fin

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