捏造 息子話 vol.1





某破壊力ありすぎる素晴らしいイラストからうっかりと派生した「未来」のお話です。
vol.1アップ後、いいぞもっとやれな天の声に後押しされ、
うっかり同じ設定でのvol.2が発生。彼が鳴海んちに行って暫くした頃の設定.。

・・・しかも・・・誰が出てくるかと思えば・・・お前かぁ!orz

・・・もう、本当にすみません。大丈夫そうなら、下へ行ってくださいませ。






嬉しげに”その名”を呼んだ黒髪の少年を、眩しげに見つめて、青年は笑う。

「その名はこちらではお控えください。朱雷(シュライ)様」

あ、そっか。ええっと。何だったっけー、お前の人の容での名前〜。うーんと。あ、そうだ。

「・・・エティ!」
そうです。と、また青年は微笑む。眩しそうな顔で。

美青年と美少年の、一幅の絵のようなやりとりを、ぼう、と半ば見惚れて見る探偵所長に気付き、エティ、と呼ばれた青年は、す、と丁寧な礼を取る。

穏やかな秋の空のような青い瞳、少し落ち着いた輝きの金の髪。物腰柔らかな青年の正体は。

「魔界より参りましたエティエンヌ・アルフォンス・ラ・フレーシュと申します。ムッシュ鳴海」

最強の魔少年を保護下に入れた(いや、保護下に入れられたのか?)数日後、鳴海探偵社の扉を叩いたフランス人と思われる青年は、そう名乗った。

「この度はこの方の人界での保護者役をお引き受けいただいて、心より感謝いたします。本来ならば、まず、私共からご挨拶に参るところを、先にこの方が飛び出されていかれたもので・・・さぞ、驚かれたことでしょう。誠に申し訳ありません」

・・・から延々と続く、流暢な日本語で綴られる美しい挨拶を聞きながら、フレーシュ、って矢って意味、だったかな、と、ぼんやりと考える鳴海が、握手を交わす。

その横で、わくわくと待ちきれないのを隠しきれない少年の様子に、しっかりしているようでも子供だな、と鳴海がどこか微笑ましく感じたのも束の間。

では、立ったままも何ですし、お茶でもと薦めた後に飛び出した、その“子供”の大問題発言に鳴海はその薦めた液体を吹き出すこととなった。







「お茶なんか後にしてさ、早く、抱いてよ、エティ!」





◇◆◇




「・・・・・・・・・」

お茶をダラダラと口から零しながら、フリーズし続ける鳴海を解凍してくれたのは、
やはりその、天使のような容貌の美しい青年の声、だった。

「・・・朱雷様。その表現は大変問題がありますと、何度申し上げれば」
「え?だって、抱きしめてくれないと、映像見れないじゃん。大体、他に抱くって、どうするの?」
「・・・」

困ったようにその青い瞳を瞬かせて、黙って苦笑いを浮かべる青年を見て、鳴海は納得する。

(魔界の奴ら、こいつを間違った意味で天然純粋培養してやがるー!)

今後の保護者としての教育方針に若干の修正が必要なことに気付き、頭をガンガンと痛ませる探偵所長を他所に、黒髪の美少年と金髪の美青年は、一見、耽美な世界を展開させていく。

早く、と、急かす少年に、仕方ありませんねと微笑んで、青年はふわりと腕を広げ。
その胸に飛び込んで、首にキュと腕を回して、嬉しげに縋りつく少年を優しく受け入れて。
再びふわりと、腕を戻して抱き込む、その青年の背に、白い翼を見たのは、鳴海の気のせいか。

暫しの後。

「母様!前よりずっと、お綺麗だった!!欠片、かなり戻ったんだね!!!」

がばっと顔を上げて、満面の笑みで己の腕から離れるその少年に、正とも邪とも聖とも魔とも、何とも形容のつかぬ眼差しをその青年が一瞬、投げたように思ったのも、また。





◇◆◇





つまりは。
「データ運搬を兼ねた、定期報告なのです」

そう。戸惑う鳴海に、ようやっと説明が為された。

魔界の様子をこちらに伝え、またこちらの欠片のデータを向こうに届ける役目なのだと。

「人界と魔界は若干、大気が異なりますので、朱雷様や私のようなモノでないと頻繁には」
身体に負担がかかりすぎるのだと。また。

「我が主の今のご様子を、万が一にでも、敵に悟られるわけには参りませんので」
このエティと名乗る青年の身体そのものを媒体に、互いに伝えるようにしている・・・と。

「・・・だが、それだと。・・・万が一、貴方が」
「万が一、私が、敵の手に落ちれば・・・ですか?」

ご心配には及びません、と、その青年はにっこりと微笑む。
「主に仇なす輩が私に触れることあらば、この身体は消滅するようにしてあります」

その場合、データはルイ様へと転送されることに。


な、と驚く鳴海に、少年が追い討ちをかける。

「あー心配いらないって、鳴海。コイツ、こんなことある前から、ずっとそうしてるんだよ」
母様に悪意を持つ者に、心ならずも支配されることがあれば、自分の身が消去されるようにって。

「嫌がる母様に無理を言って、そう言霊を刻んでもらったって」
すんげー嬉しそうに自慢するんだもん。もー息子としてはやってらんねーって感じでさ。

「何も、そこまで」
しなくとも、と。戸惑いながら鳴海が、その、満足そうに笑む青年に述べると。

仕方ないのです。と。少し寂しそうな声が返ってきた。
私は、裏切り者、ですので、と。



「でも、いーなー。エティは。役目とは言え、毎週、母様に会えるんだから」
俺なんか、年に一度って、ルイに言われたのに。

そう、拗ねたように呟く少年の頬を、青年の白い指が優しく撫でる。

「貴方様は、御二方にとって影響が大きすぎるのですよ。欠片が戻りきらないのに、動こうとされては大変なことになりますでしょう?」
最悪、御身体が崩れておしまいになります。分かって、おられるのでしょう?

・・・分かってる、と。俯いたまま少年は返す。
分かってるよ、年に一度のアレも、皆が何重もの守護の陣を組んでくれてるって、ことも。と。

でも、お寂しいのですね。と、再び青年は少年を抱きしめる。

「何度でも、見せてさしあげますよ。貴方様のご両親のお姿を。・・・貴方様が」

――― 寂しく、なくなるまで。





◇◆◇



では、また参ります。どうか、この方のことをくれぐれもよろしく、と。
深々と頭を下げる青年に、礼を返し。
Au revoir、と音を残した、その姿勢の良い背中を見送って、鳴海はぽつりと少年に問う。

「今の、何て、悪魔なんだ?」
何か、全然、悪魔っぽくなかったんだけど・・・。

くす、さすが鳴海。と笑う少年の笑みは、どこか母親に、どこか父親に似ている。

「初めて人間になった天使様、だよ。鳴海」
旧約聖書、だったかなー。ヤコブだか誰だかに負けて、人間になった天使様居ただろ?

「アイツは母様に負けて、悪魔になったんだ。・・・母様の魅力に負けて、ね」

あー早く俺も母様ぐらいの魅力、身につけないとなー。もっと大物を落とさないと。
と、これまた、大問題発言を零しながら、部屋に戻ろうとする少年を見やって。

鳴海も、思い出す。

あれか。旧約聖書で、ヤコブに負けた大天使、と言えば。
南の方角を司り、闇の中でも自ら光を放つという、偉大なる裏切り者。確か、その名は。


――― ウリエル。










Fin

種々雑多部屋top



・・・絶望した!!(自分のネーミングセンスの無さに!!)

(注:エティエンヌ〜は、公式(魔神転生)からです。が)