注
アバチュタイプの超Sな人修羅と、ボルテクスを知らない超ドライなライドウが出会ったら
という設定の元に進めています。1回戦は一瞬で片がつきましたので、S修羅から見たライドウは
「ルイのお気に入りの可愛いネズミちゃん」(殺すのはもったいないし、成長するのを見てみよう)。
ドライドウから見ればS修羅は「正体不明の超ハイレベルな憎たらしい悪魔」
(いつか必ず管に入れて、跪かしてやる!)という結果となりました。
◇◆◇
「へぇ、強くなったじゃん」
多少は、と、後から付け加えないのかと自嘲するほどに、余裕のある表情で。ソレは言う。
以前に一度だけ、会った人型の悪魔。恐ろしいほどに強く、寒気がするほどに禍々しく。
忘れられないほどに、美しい。
「でも、俺を、その管?に入れるのには、まだまだ、だね」
お前、超美人だから、入ってやりたい、ところだけど。
以前と変わらぬ、無邪気と言えるほどの笑顔で、ソレは言う。・・・ぬけぬけと。
「主様、お戯れを」と、苦言を呈すヤツの仲魔は、あれはクー・フーリンか。
あの慇懃無礼で、性格の悪いアレ、か?
・・・別人としか、思えん。主の差とでも言うのか。全くもって腹立たしい。
だが。
「名前、ぐらいは、言う気になったか?」
「・・・うん、その目。好きだな」
相変わらず、この状況で、そんなことが言える、度胸もね。
僕の上にのしかかり、僕の刀を左手で掴み、僕の首を右手で締め上げながら、またソレは笑う。
「いいよ。教えてやる」
主様、という声に、お前は黙ってろ、クー、と視線もやらずに返し。
「俺は、人修羅って、呼ばれてる」
他の名もあるけど、まだそれは教えられないよ。だって、まだお前、弱いもの。
ギリ、と歯をかみ締める悪魔召喚師を、クスクスと嘲笑って。
「強すぎるモノの名を得ると、命が縮むよ?それぐらい、分かってるだろ?」
俺、もうちょっと、お前が強くなるの、見てたいし。
それに。
透き通った金色の瞳が、とろり、と紅色に変わる。
と、同時に、その魔力も恐ろしいほどに増大して。
本当に、遊ばれていたのだ。と理解して歪む悪魔召喚師の美しい顔をつい、と
その爪の先でなぞり、ピッと切れた傷跡から流れる血を。
「・・・ッ」
ペロリと舐め上げらそのまま唇を重ねてくる。
何を、と戸惑う黒い瞳の目の前で光る、紅い瞳。
沈む陽を思わせるそれが、紅い月のように、ゆるりと弧を描く。
思ったとおり、お前のマグネタイトは、美味しいよ。
そう、にこりと、言葉を落として。
じゃ、またな。と、あっさりと立ち上がり、背を向ける彼は、もう振り向くことも無く。
苦しげな表情を見せる、お供の幻魔に、拗ねるな、バカ。と、口付けを与えて。
怒りに身を震わせる悪魔召喚師の前から、瞬時に姿を消した。
・・・悔、しい。
絶対に、強くなる。そして、いつかあの悪魔を、己の、己だけの、モノに。
アノ悪魔が、己の"名"すら、問わなかったことに気付いていたヒトは。
己の無力さと、正体が分からぬ胸の痛みに、ただ、拳を握り締めて、耐えた。