赤い、と少年は思う。
この壁も、この腕も。
頭の中を染めていく、この訳の分からない何か、も。
その赤い半魔の手は、意外にも優しい。
優しくて、甘い。
蛇苺だ、と思いつつも、好奇心で口に入れると、まともな味がして、驚いた。
驚いて、くせになった。
そんな感じがする。
いつか、そう言って笑ったら。
これまた意外にも、傷ついた顔をしたので、余計に。
くせに。
「・・・boy. Don't ・・・now.」
今は、俺のコト以外を、考えるな、と。
拗ねたように。
聞きなれたフレーズを落としながら、耳朶を弄んでいた舌が、ちら、と黒い突起に動く。
「・・・っ」
ガク、と震えて床に膝をつきそうな身体は、絡みついた腕と、貫かれた楔に引き止められ。
は、と詰めた息を吐きながら、少年は赤い壁についた、自分の赤い両腕を見やる。
感じると、赤く染まっていく紋様。
まるで、生命の危険を知らせるように。
この男さえ居なければ、そんなこと知らずに、済んだのかも。
紋様だけじゃなく。
「ん・・・あっ」
声まで、赤く染まる、なんて。
おまけに。
「や、ダ、ダン、テ。それ、ダメだ・・・って」
その、黒い突起が。
「あ、あん・・・っ。や、だ・・・ぁっ」
心を許した相手には、こんなふうに、感じる、なんて。
「Your ・・・so sweet , baby」
is なのか are なのかは、聴き取れない。
その、主語も。
東京受胎の後にまで、英語のリスニングテストがある、なんて、思わ、なかった。
でも、もう。
「イカ、せて。ダンテ」
「OK」
そのリスニングはvery easy.
そして。
赤を纏う男の左手は少年の身体を弄り、右手は少年の男根を擦り、舌は黒い突起を愛しながら。
緩やかだった動きを加速させて。
少年の思考まで、赤く、染めた。