「ん・・・シュラ?」
腕の中に居たはずのソレを探そうと起き上がったライドウは、ふと、違和感を感じる。
なにか、おかしい。
まだ起きるには早い、けれど、窓の光は、朝を示している。・・・なのに。
妙な静けさ。
人の声、どころか、鳥の声すら、しない?
少し焦りつつ、身支度を整える。
妙だ。
ああ、そういえば、昨晩シュラが何か、言っていた気が、する。
思いながら、事務所へ向かい、扉を開ける。が。
――― だれも、いない。
「ゴウト?」
念の為に呼んでみるが、やはり、返事は無い。どこかに出かけているのか。
「鳴海さん?」
依頼料が入ったばかりだ。あの人は、また朝帰りだろう。こんな時間に帰っているはずもない。
よくあることだ。なのに。
この不安感は、何だ。
「シュラ?」
今は、とりあえず、彼に会わなければ。
彼に会えば、きっと、この妙な違和感も不安感も無くなる。
この時間なら、彼はよく屋上で空を見ている、と、思い出し。
トントンと、階段を上がり。キィと扉を開けると。
おはよう、ライドウ。と、柔らかな声がして、ホッとした。