朝焼けの光の中で、人の容をとった彼は優しく、微笑んでくる。
その笑みに安堵と、恋心を同時に引き起こされながら、何故かライドウの違和感はつのる。
「よく眠れた?」
「・・・はい」
そう、良かった、と、また柔らかく微笑んで、それじゃ、早速だけどと彼は言葉を続ける。
「答え、聞かせて」
「答え?」
「昨日の、夜の」
そうして、悪魔が頓着なく続けるのは甘美で淫靡な、質問。
――― 俺 に 抱 か れ た い ?
それは、単刀直入な。そして、朝の光の中で答えるには、難しい質問。
けれど、己の頬に朱が走るのを知覚しながら、ライドウはこくりと肯く。
――― 俺 の も の に 、 な る ?
心臓が甘く痛む。ああ、これは幸福な夢なのだと。
どこかで、そう思いつつも、また、こくりと人は肯く。
「ああ、ごめん。条件、言い忘れてた」
言わなきゃフェアじゃないね。と首を振る悪魔に、条件?と、美しい少年は首を傾げる。
「俺、さ、もらうなら、全部、欲しいんだ。ライドウのこと」
あからさまな欲を示されて、また、人の熱が上がる。ああ、やはり、これは。夢だ。
・・・だって、貴方が、そんな言葉を僕に言ってくれる、はずなど、ない。
嬉しいのに、悲しい心を押さえつけて、微かに笑うライドウに、シュラは言葉を続ける。
「ライドウの心も体も魂も全部、欲しい。だから」
爽やかに笑って、悪魔は眼下に広がる帝都を指差す。
――― だ か ら 、 お 前 が 大 切 に し て る も の 、 全 部 、 壊 し た。
え。と、何を言われているのか分からずに戸惑う悪魔召喚師を、困ったように悪魔は見やり。
そして。
「あ、コイツら、忘れてたな」
何気なさげに、彼はライドウの胸を守る、白い装身具に指を触れさせる。
――― と。
ホルスターに入れられた全ての管が、一瞬ブルと震えたその後。
静かに、なった。