黒を纏う人修羅が選んだのは
優しく黒い夜を望む、静寂の男
暗い、街。
街灯も、ほとんど無い。ネオンやイルミネーションなど、皆無。
さっきまで居た”街”とは、大違い。
・・・でも、だから、こそ。
「星が、綺麗だよな〜」
静寂の世界。その中心の管理塔のてっぺん。降るような星の下、静夜は思う。
俺が居るのは、シジマの中心部。
この理想郷、では、22時を回ると、認可を得た特定の区域を除いて外出も電力も制限される。
コンピュータロックが、自動でかかるんだから、出ようったって、出られない。
大体が店自体も22時には当然閉まるんだ。コンビニもゲーセンもバーもクラブも無いのに
法を犯してまで外出しようなんて、奇特なヤツはまず居ない。
お陰で住民のほとんどは早寝早起き健康体。余りまくる夜間電力もばっちり有効活用だ。
ついでに言えば、何故か出産数も増えているw。
受胎前の世界ではあれだけ少子化少子化騒いで、どんな政策とっても焼け石に水だったのに。
(・・・娯楽が少なくて外出できないってなると、ヤレることは限られるもんなぁ)
まあ増えすぎると増えすぎたで困るから、その辺りはまた調整かかるだろうけど。
――― 黙。
強すぎる人の欲望を制御下に置く、静かな世界。
どんなものか想像もつかなかったけど、思いのほか。
「まともな世界、だよな」
過剰生産、過剰消費、不要なほどの金、有り余る富、使い切れないほどの何か。
それを求め、それに追われ、それに振り回されて発生し増殖するモンスターのような人の欲。
アイツが憎んだのは、そうやって人が本来の人らしさを失っていくコトだったのかと、今は思う。
本音を言うと、少し、だけ、不安、だったのだ。静寂の世界の実態が。
創世しておいて、それってどーよ、と自分でも思うけど。
でも、アイツが。
前の世界の全てを壊してまで、それだけの信念をもって創りたい街を、俺も見てみたかった。
ま、結果的に。
「悪くない、よな」
もっと、こう。SFでよく出てくるような、ビシバシ管理された無機質な世界かと思ったけど。
単に、強すぎる感情を、上手くコントロールして平和に生きましょう、って感じ、かな。
◇◆◇
「もう、用事は済んだのかね」
「・・・まだ、起きてたんだ」
唐突に掛けられた、声に、少し、驚く。
「早寝早起きを推奨するトップが、夜更かしは駄目なんじゃないの?」
驚かされた礼に、ちょっと意地悪を言ってみる。
「その世界の、”創世神”が、率先して夜更かしなさっておられるのでね」
崇拝者としては、従わざるを得まい?
「・・・」
あっさり切って返された。相変わらず、ああ言えばこう言う、の見本みたいな奴だ。
「俺が不在の間、どうだった?」
「特に、何も」
ゆっくりと近づく相手に問いかけると、返事と共にパサリと俺の肩に毛布が掛けられる。
「・・・寒くないよ?」
「私の気分の問題だ。気にする必要は無い」
「・・・」
どう答えていいか分からなくて、また俺は視線を、戻す。眼下に広がる静かな夜に。
「・・・久しぶりの現世は、どう、だったかね」
沈黙を破る穏やかな声。・・・だからシジマのトップが静寂を壊すなってw。
「・・・そう、だな。懐かしかったよ」
覚えてるだろ。この時期だからさ、街中がイルミネーションだらけでピカピカ。
「・・・戻りたく、なったかね」
ほんの少し、揺れる声。
氷川。シジマのトップ。
聞くだけで心が冷えそうな名前を持つ男。
コイツが、本当は、少し息をかけただけで揺らめく炎だってことを、俺は知ってる。
「んー。いや、そうじゃなくてさ。何て言ったらいいのかなー」
何か、分かったような気が、したんだ。
何を?
「街中を光らせるイルミネーションよりさ。ケーキに刺さった小さなローソクの方が、嬉しいな、って」
また、コイツの炎が揺れた気がして、振り向いてみる。
「!」
ほら、慌てて緩めた顔を戻しやがった。思い切り嬉しそうな顔をしていた、くせに。
「・・・コホン。素晴らしいキャッチコピーだな。是非、次の政治広報で採用させてもらおう」
「ちょ、それ、やめて」
どうせ、俺の名前出す気でしょ。目立ちたくないって何度言えばこの男は。
「何を言う。そもそも君がこの時期に不在であることを、国民に説明するのにどれだけ苦労を」
はい。それはもう、心から悪いと思っております。優秀な貴方が居て助かっておりますです。はい。
はー。やっぱ。ああ言えばこう言う、だ。とりあえず、黙っておこう。やはり沈黙は金だ。
また黙って街を見ると、フワリと落ちてくる、白い・・・。
「雪か」
「・・・うわ。キレイ!・・・星が降ってきたみたいだ!」
自分で言ってから、また、政治広報に使われるかも、とか思っちゃったりしたけれど。
本気で、そう思ったんだから、まあ、いいや。
そのまま、真剣に雪に浮かれる俺の後ろで、コホンと誰かが音を立てる。
「我が神。雪と戯れるのも、結構だが」
準備したケーキが劣化するので、そろそろ中に入ってもらえないものかね。
「へ?」
・・・ケーキって聞こえたけど。聞き違い?ああ、そうか計器か。って、何の計器が劣化?
「・・・くだらないコトを考えているようだが。・・・ローソクも準備してあるので」
当の本人の用事のお陰で、数日遅れ、だが。
暗くて分かりにくいけど、どうやら顔を赤くしてる?・・・コイツが?
何だか、色んな意味で嬉しくて、顔がニヤつく。
「覚えてたんだ?」
前の世界の、超有名な神様の誕生日。
俺だけのために祝ってもらえることなんて、一度も無かった。
「・・・忘れて欲しいというのなら、まず君が改名したまえ」
Silent Night、などと、一度聞けば、誰でも由来が分かるような名前を。
自棄になったようにボヤくコイツが可愛くて、ありがと、と。毛布ごと抱きついてみると。
少し戸惑った後に、ゆっくりと静かに、腕を回して、きて、くれた。
Happy Birthday. Seiya.
Ende
GIFT部屋top
静夜。ノクターン出身。戦闘センスはピカイチ。猫は被っているが元々喧嘩、というか戦闘好き。
身の内の空虚さを、闘いで無為に昇華していることを、どこかで理解している。故に静寂を選択。
アマラを知らないので、他の彼よりは(こういう言い方は何だが)、健康的で屈折度は低い。
明るく爽やか、開放的で享楽的にすら見える外面、で、うまく覆い隠した、
果てしなく広がる静かな”夜”がルイのお気に入りポイント。
以下、若干ぶち壊しなので、反転w。
キメ台詞は「お前も眠らせてやるよ。・・・俺の中でな」・・・だったらしいw。
(↑キメ台詞が既に受けくさいのは気のせい)
ほんでもって、静夜が別の時空へ行くたび、もう彼は返ってこないかもしれない、とか
どこかで思いながら、黙って、待っている氷川氏。耐える妻。攻だけど。
なかなか素直に愛情表現ができない自分を、もの凄く持て余しているといい。
実は、上の文の後に結構いろんなことがあったんですが、もうズバッと削除しました。
だって、触手とローソクネタは違うヤツに取っておかないと怒られるので。w。