満月の夜はいい
月の魔力に満ちた空気を呼吸するだけで、
俺の体に流れる血は16ビートを刻んで全身を駆け巡る。
銀の髪の一本一本にまで精気が注ぎ込まれ、
感覚は研ぎ澄まされて異常にハイな気分になる。
『デビル メイ クライ 解体真書 prologue』より
『何も起こらないワケがない』
「・・・っ、ぁっ」
この世界に月は無い。太陽も無い。
あるのは、紛い物の光源。母殺しのカグツチ。
その煌々と光る最大の光量が、コイツの半分を、オレの半分を駆り立てる。
「開けろ、キョウ」
「ぅん、…ダ、ンて」
抱きすくめた華奢な体躯の、象牙の肌をまさぐりながら。
まだ物慣れぬ風情の少年の唇を舌でつついて、銀髪の半魔が命じると。
あっさりと、その柔らかな扉は上下に開く。何かの罠のように。
「…… good boy(いい子だ)」
「んっ、んんっ」
ちゅくと侵食するそれに応えて、おずおずと絡められる舌の動きはすぐに熱を上げた。
人修羅。
依頼人からのターゲット。
狩る対象だった獲物。希少な悪魔。
初めは面白い、と思った。コイツとの暫しの道行きも楽しいだろうと。
だから、この肉のやりとりもその「お楽しみ」。ほんの「つまみぐい」程度、だと。
煌天を迎えるたびに、カグツチへと近づくたびに。少しずつ、けれど確実に壊れていく
コイツを引き止める手段のヒトツ、だと、そう割り切っていた、はずなのに。
(ミイラ取りが・・・って、やつか)と。
悪魔に絡め取られた悪魔狩りは、自嘲気味な笑いを浮かべて、少年の胸を齧る。
(いや、それとも)
半分の人同士が、半分の魔同士が、引き合うのか。
完全なる“何か”に成りたいと。
「んっ…や、だ、ダン…ッ」
はや、く、と強請るその少年の瞳は、狂気に支配された金。
「Slow down, babe.(あせ、るな。響)」
煌天は始まった、ばかり。始めっからフルスロットルじゃ、終わった頃には体力は一桁だ。
そう、気遣ってやった、のに。
獲物を前にした肉食獣のように。ねぶるように上唇を這う少年の舌先から落ちる台詞は、極悪。
「欲しく、ないの?俺が」
俺は欲しいよ。あんたが。ねえ、ダンテ。
絡みつく甘い声。
挑むような誘う視線。
その双眸に輝く金の満月。
「…っ」
鳥肌が、立った。全身に。
「ぁ、あっ、やぁっ」
床を裂く左手の甲を俺の左手で、助けを求めて伸ばされる右手の甲を俺の右手で、覆う。
カグツチの光から隠すように、俺はソイツを俺の身体で覆う。
指も手も腕も肩も背も重ねて、ヒトツになる。
人は、本来“全き生き物”であったのを、その力を怖れた神に引き裂かれたのだと。
だから元のカタチに、本来の完成された生き物に戻りたくて、自分の対を求めて。
互いの欠けた部分を、余った部分を合わせたがるのだと説いたのはあれは、プラトンの『饗宴』か。
「ひっ、ん。……あ、ぁあ、も、っと…っ!」
俺の動きに合わせて揺らめく腰が、赤い光で甘い罠のような軌跡を描く。
その淫猥さに口内がからからになるのを、耐えて、深く穿った。誰にも奪われないように。
ほら、分かる。コイツが俺の定められたHALF(半分)だ。
そういや、男同士のエロスこそが至上のそれだと書いてたな。ギリシャのおっさん。
褒めてやるよ。確かにどの雌とヤったときよりも、最高だ。何もかも。
甘く悶えて身体をしならせるコイツを抱きしめて、俺はカグツチを睨みつける。
きっとコレが最後だ。コイツがお前に狂わされるのも。今日がきっと、最後の煌天。
残念だったな。カグツチも、老人も。他のコトワリの奴らも。
――― コイツは俺の獲物だ。俺が狩った。俺が捕らえた。だから、俺がもらう。
『俺に狩られて、悪魔どもは哭き喚く。』
「もっと、啼けよ、響」
「っあぁ!」
言葉で嬲りながら奥のいいトコロを擦ると、ヒクリと顎が上がり、声は更に甘くなる。
いい声だ。だが、足りない。まだ、足りない。ぜんぜん、足りない。
「もっと、寄越せ」
「?…ダン、テ?…えっ、ぁ、ぁ…っ、や、そん、なの、やぁ」
目の前に、ごちそうをちらつかせておいて、喰うなってか。冗談じゃねぇ。
首に生えた黒い突起の麓を舐め上げらると、狂ったように戸惑いやがるから、
おしおきのように下の突起の嚢を揉んでやると、切羽詰ったような啼き声で咆哮する響。
さあ、もっと狂え。
カグツチにじゃない、満月にじゃない、俺に。俺だけに狂え。俺の金の月――― 。
抱きすくめられたまま、死んだように動かなかった身体がピクンと動く。
まだ寝てなかったのか、と、腕の拘束を緩めてやるとソイツはふる、と身体をくねらせる。
「………」
おい。なんで、いちいちお前は、そう、透明な色気全開なんだ。
また、その気になっても知らねぇぞ、と、そこまで考えて。俺は、ふと、気づく。
――― 惑わされて狩られて狂わされているのは、本当はどっちなのかと。
くそ。本当に、ミイラ取りかよ。冗談じゃねぇと眉をしかめた俺を怪訝そうに見てから。
ふ、と綺麗な悪魔は、分かったように悪魔的に笑う。
そして、笑んだまま、右人差し指を俺の心臓に突きつける。手のひらで銃のカタチを作って。
「何の、マネだ?」
魔弾でも打つつもりか、と笑い返そうとすると。
「Bang!」
「!」
魔力を発動せぬ手の銃に打たれたはずも無い心臓は鳴るはずも無い悲鳴をキュルと上げる。
「DANTE MUST DIE!」
くすくす。手に入れた。もう、あんたは俺のものだよ。ダンテ。
満足げに、そう最後に物騒な宣言を囁いて、俺の金の月はやっとその両目をゆっくりと閉じた。
Shit! DANTE MUST DIE! だと。
それでこのManiaxをClearしたからには。
現世に帰った後は、覚えていろよ。このクソガキ!
Ende
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DANTE MUST DIE!で「デビル メイ クライ」をクリアすると、
魔人の力が
無尽蔵に使える「スーパーダンテモード」が使えるそうです。
がんばってください。響クン。