蛇のやうなあそびをしよう 萩原朔太郎 (1886-1942) 「我にしておけ」 唇が触れ合う寸前でその身を止めたまま、黒衣の男は、そう言った。 彼と瞳を合わせたままの悪魔は、無言で彼の顔を彩る美しい瑕にそろりと指を触れさせる。 優しく指先でなぞられる、その感触に耐えながら男は言い募る。 「我なら、お前が消えても、後を追わぬ」 つと、指が止まり、悪魔の瞳が惑ったように、逸らされる。 「我なら、お前に愛されなくとも、傷つかぬ」 逸らされた瞳が再度、焦点を合わせ、悲しそうに男の嘘を糾弾する。 「虚言は通じぬか」 苦笑した男はそのまま悪魔のうなじに顔を埋めた。 「では、真実を言おう。我が傷ついても、アレが傷つくよりは、お前が傷つくまい」 言葉遊びのように軽くその言を放り投げ、男は悪魔の首元に口づける。 「ここでいいか」 「・・・ああ」 チクリと熱い痛みを感じながら、悪魔は優しすぎるその男の背にふわりと腕を回した。
マニクロその他top いつか書けるかな〜な話のサイドストーリー。相手は美しすぎる瑕を持つ彼。 |