CURSE ―呪い― 〜ウリエル編後 番外編〜


「う・・・わっ!」
「キャアアッ!シュラッ!!」
「主様っ!」
「主!!」
「シュラッ!この・・・バカがっ!!

崩れた崖から落下したシュラを追いかけて。
バサリと、猛禽類を思わせる白い力強い翼が音を立て、降下していくのが見える。

「・・・っ」
「待て、クー・フーリン!いくらお前でも、この崖を飛び降りるのは無理だ!!」

下手をすれば足手まとい、うまくいっても大怪我をすればシュラが悲しむぞ!と、ロキに止められても、幻魔の瞳は焦りを隠さない。

「だが、ロキ!落下途中で主様の光が」
「ああ、危険色に変わりやがったな」
「あれって、絶対CURSEよねぇ。どうしよう〜。私の羽根じゃ降りるのに時間かかるし」
それに風が強いから、流されたら余計に面倒になるし、でもでも、と。ピクシーもあからさまに焦っている。
「アチラノ坂カラ、降リラレルハズダ。多少、時間ハカカルガ、確実ダ」
日頃からフィールドを駆け回っているケルベロスの意見に従い、坂を下る仲魔たちの表情は硬い。

「ウリエルはメディアラハンを持ってる。HP面なら心配ないだろう」
「・・・あの者が、主様を回復すれば、の話だ」
「・・・」

少し前に変化したソロネの心を持つウリエル。
元ヨスガの徒。バアル・アバターの僕。・・・シュラの、敵。

「信用できない、か」
「主様は、甘すぎる」

それが、主様の強さを、美しさを形成する一つだと分かっていても、このような非常時には。
(その優しさが命取りだと、何度言えば分かっていただけるのだ・・・!)



◇◆◇


崖を降りると、凄まじい地響きが伝わってくる。

「・・・こいつは」
「主様の、波動?」
「うわーすごい!!ぶち切れたときか、混乱したときしか出さない本気の本気だよ。コレ!」
「急グゾ!コノ辺リノ岩盤ハ、崩レヤスイ!!」

このまま攻撃が続けば、本人が生き埋めになる可能性が、と。
皆が、シュラの気を探りながら、急いで駆けつけたその場所には。

「「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」

・・・ピキ。
(お、おい。クー・フーリン。落ち着け。ゲイボルグを構えるな!)
「うわぁ。すっごく、仲良しさんだぁ」
(ピクシーも!余計なコトをわざわざ言うなって!!)
「・・・トリアエズ、岩ヲ ドケルゾ」

ウリエルの片翼を拘束していた岩をどけ、ペチとその青みがかった頬を叩く。

「ああ、ご到着いただきましたか。思ったより遅かったですね」
おかげでうっかり、眠ってしまいました。と、さらっと抜かすその言葉をシュラに聞かせてやりたい。

((((((((どうせ、狸寝入りだったくせに))))))))

「何かおっしゃいましたか。まあ、もう少しゆっくりお越しいただいても良かったのですが」
幸せそうにくだらんことを抜かしてないで、その腕の中の宝物をさっさと離せ!この二重人格者が!

未練タラタラなウリエルから引き剥がした、眠ったままの主が無傷なことに皆が安堵する。
(意外に苦労性のロキが、違うところも無傷かを、それとなく確かめたかどうかは永遠の秘密だ)

「MPとHPを一気に使いすぎて疲れたのね〜。まあ、あれだけ攻撃すればね〜」
崩れて埋まった横穴の被害甚大な様子を見て、ピクシーが溜息をつく。

「ソレヨリモ、早ク泉ニ向カウゾ。ココカラナラ急ゲバ次ノ煌天マデニ着ク」
シュラを背中に載せて、ご機嫌そうに尻尾を振りながら、そうケルベロスが言った。



◇◆◇


「ウリエル」
「何か?クー・フーリン」

泉に到着し、シュラを回復させた後。
クー・フーリンがウリエルに声をかける。
そして、腕を直角に曲げて胸に当てた、礼の形を取り。

「礼を、言う」と、頭を下げて、一言。

「おう、オレからも。ありがと、な」
「ありがと、ウリエル」
「感謝、スル」

口々に仲魔から声をかけられて、ウリエルが硬直する。
主を助力するなど当然のこと。ヨスガ陣営では、こんな言葉をかけられたことなど。一度も。

「・・・当然の、ことを、したまで」
礼には及びません、と言う言葉が微妙に震え。

その震えに気付いた仲魔が、くすくす、と、面白そうに笑う。

「やーっぱ。お前はウリエルだけど、ソロネだよな!」
「うんうん。ソロちゃんも、こんなふうにすぐ照れちゃって」
「変ワラナイ、ナ」

その親しみのこもったからかいに、どう答えていいか、分からないウリエルの前に。
手袋を外した白い手が差し出される。

「クー・フーリン?」
「・・・今後とも、よろしく。ウリエル」

戸惑いながら、握ったその手は力強く。心が、動く。
これは、仲魔として認めてもらった喜び?・・・そんな惰弱なモノが、嬉しい?

視線を彷徨わせるウリエルを見ながら、
(ですが、今後一切、抜け駆けは許しませんよ)
と、クー・フーリンが睨んで呟く声に、皆が耐え切れない、とばかりに吹き出し。


「あれ?どったの、皆?」と、目覚めたシュラが泉から出てきたときには。
固まったままのイケメン悪魔二人を中央に、仲魔全員が笑い転げていた。






Ende


真V部屋top





人修羅が居ないと、どうして皆、灰色になるんだろう。。。