貴方がくださった、私の文字を、お教えください、と。
控えめに微笑む白い幻魔に、主が「凛」、と「隣」を教えてやったのは、つい先日のこと。
そのいずれもを、つくづくと興味深そうに、見て。
これは、と、彼がその黒い手袋を嵌めた指で指したのは、凛の文字の右上の部分。
「ああ、回のこと?」
「カイ?」
「まわる、って意味・・・って言えば分かる?」
言われてクー・フーリンはよくよくと、その形を見る。なるほど、くるりと巡る□が、二つ。しかし。
「円では無いのですね」
「ああ、漢字は大体、○を□で書く、よな〜。そういう柔らかいのはひらがなに、なるかな」
そっか、そんな風に考えたこと、無かったけど。うん。違う見方っていいね。面白い。
そう、嬉しそうに言った主は、逆に下僕に問いかける。
今度は、お前の国の文字を、教えて、と。
その純粋な願いに、困ったようにケルトの英雄は頭を下げる。
「申し訳ありません。主様。我が故郷には」
文字は無いのですよ、と。※