えうれか 05



「私は言ったはずだ。人修羅。・・・君は私の“主人”、だと」
何度も、そう言って。・・・ダイヤモンドまで、渡したというのに、本当に君は。

「俺も!言ったはずだよ!フトミミさん」
そんなこと言わないで、くれって。何度も。
・・・俺はあなたのことを、そんなふう(・・・・・)に見たことなんて。

「・・・」
絶対に意味が分かっていなさそうな、それでも拒絶の言の葉が疎ましくて、溜息が出る。

――― 本当に、君は。仕方の無い、悪魔(ひと)だ。

「・・・人修羅。私は、多少は“現世”の記憶があるようなのだが」
「え?」
「君の世界では、“主人”とは“(あるじ)”の意味だけでなく」
・・・他の意味合いも持っていたはず、だと思うのだが、どうなのだろう。

「・・・」
え?え?え?、と驚愕と戸惑いの音が響いてくるような、瞳。
あまりにも予想通りの表情をするので、おかしくなる。腹の底から。・・・生まれて初めて(・・・・・・・)

つい。くっくっ、と。そしてそのまま、ハハハと笑い出す私に。
え?・・・って、声出して笑うフトミミさんなんて、初めて見たよ!
と、君はまた予想通りの。表情を。

ああ、何て、愛しい。

「くっ。み、三行半(みくだりはん)を叩きつけるのなら、せめて、現状を理解してからにしてほしい。人修羅」

笑いながら、そういうと、更に大きく丸くなる、愛しい、瞳。さすがに三行半は少しは通じたか?
だが、これだけ言っても響くのは、まだ驚きの音色が強いのか・・・と、溜息が出そうになるが。

・・・この鈍感さ故に、他の仲魔の恋情にこれまで気付かなかったと思えば、許せもする。


「人修羅・・・こう、言えば、分かってもらえるだろうか」
いかに君に懇願されようと、私は後に引かぬ。君を得るためになら神にでも挑んでやる。と。

(・・・誰が、離れるものか。二度もカタチを変えて、やっと「見つけた」、この生きるための目的から)


ああ。あまりに予想外の展開に、処理が追いつかなくなったのだろう。
・・・ただ、困ったように、迷い子の瞳で私を見る君の、その震える唇に、口付ければ。
さすがの君も、状況を理解して、くれるだろうか。

そう、思いつつ、も。

土塊から出来た人形は、己に魂を吹き込んだ悪魔という名の神の手をそっと取り。
うやうやしく、その甲に口付けを落として。
鈍感な“主人”の頬を、赤く染め上げた。









人修羅。君は、やはり、分かっていない。

“マネカタ”とは、世界が壊れても、その思念だけで自分のカタチを造りだせるほどに。

強欲で、したたかで。

そして

執念深い存在なのだと、いうことを。


私から逃げられるなどと、思わないことだね。




Ende

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※ 三行半=離縁の際、夫が妻の家族に出した離別状。転じて離婚することの意。

・・・以下、反転します。

フトミミさん最強伝説・・・。先読みの力をプロポーズの予行に使っちゃいけません!
この人修羅がフトミミさんにベタ惚れなのも手伝って・・・うっかり一番押しが強いキャラに。

ということで、実は押しかけ女房でしたフトミミさん。と、いうオチ。
いやー、私の主人、私の主人、言いながら宝石を寄越してくるので、これって、
周囲から見れば牽制以外の何物でも無いんじゃないかと腐女子フィルターパイルダーオン←?

まあ、先読みの能力あるから、浮気などきっと、一生できそうにありませんなw。
一生尻に引かれていればいいよ。人修羅。

あ、それと本文、最後にもう一文あります。怖くて隠しちゃったー。 orz。