永遠 〜アマラEND(阿摩羅の果て)02〜



「お前と俺が組めば、全部を無にできるよ。お前は最強の人修羅だから」
「え?」と、俺は戸惑う。
……最強?俺が?……こんな中途半端な存在が?

「最強だから、お前はイタイ目にしか遭わない。・・・お前が、存在する限り」
今までもそうだっただろ、と悲しそうに聞かれて、俺が返せる言葉は無い。

「全てを消せば、もう苦しむだけの輪廻を巡ることも、無くなるよ。シュラ」
「”全て”を消すの?」
心も想いも痛みも苦しみも喜びも、神も天使も悪魔も・・・人、も?

「そう、何もかもきれいさっぱり」
「……」

「なあ、シュラ。あの醜い世界で、ひとつでも、残したいものが見つかったか?」
「……」

「現世でもいい、ボルテクスでも、アマラ深界でも。お前の美しい”理”は見つかったか?」
「……」

優しいカイの声を聞きながら。
・・・そうか、と、俺は思う。

これは最終試験なんだ。ヤヒロノヒモロギを持つ者への。
中途半端な理しか、覚悟しか無いなら、ここで止めておけと交合(・・)前に忠告するための。
その、貫き、貫かれる痛みを回避させるための、優しさなんだ。

「お前もどこかで分かってるんだろ?俺達は、何度生まれても……」
「うん」
と。続きは聞きたくなくて、俺は言葉を挟む。。

うん。俺達は、そう、だね。何度生まれても。いつ、生まれても、どこで生まれても。
性を変えても、容を変えても、心を変えても、いつも。いつも、必ず。
俺達の本質に、気付き恐れ憎み拒むモノに、穢されて犯されて引き裂かれて、殺される。

(特にお前はそうだ。最後の最強の人修羅、だから、”あいつら”も必死に、なってる)
お前の持つ、原初の力が。無から有を生み出す力が、欲しくて。誰にも奪われたくなくて。

……生きている限り、お前が進むのは文字通り、修羅の道だ。
それをどこかで分かっていて、お前が自分を”シュラ”と呼ばせることも、俺は知ってる。
でも、もう。

「終わりにしないか?シュラ」

そう言うカイの声は、瞳は。とても、とても優しくて。

俺は、彼の差し伸べた掌へ、手を。




◇◆◇




「シュラ!」

突然に、聞こえた、声。
ここは、” 何 も 無 い ”、ところなのに?

「シュラ!しっかりして、ください」
『落ち着けライドウ。とりあえずは様子を見ろ』
「だがゴウト!気を失ってから、もう、かなりの、時間が……」

(あの、冷静なヤツが、あんな声、出すなんて)

”ここ”まで声が届かせることができるのか、と、カイは驚いたように、言う。


「……ごめん。カイ」
伸ばした手をおろして、俺は苦笑する。
俺、思い出したよ。俺の、美しい”理”。失いたくない、何か。

同じように手をおろしたカイの、俺を見る瞳は、酷く哀しい。悲しくて、厳しい。
……俺には思い出せない、誰かのように。

あの声を残したい?
うん。

アレが……誰かの準備した餌だって、分かってるんだろ?他の道を選ばせない、ための。
うん。

……その為に進む道は……一つしか無いよね。
うん。

それで、いい?
それでいい。


――― もう、それだけで、いい。


そっか、と。でも、気が変わったらいつでも俺を呼べよ、と、寂しそうに微笑むカイに、俺も。

笑って、ありがとうと、手を振った。



◇◆◇




「シュラ!」
「主様!」

あれ?……俺、どうして。

確か、これからアマラ神殿に行こうって、言ってて。

「もう!いきなり倒れるから、どうしたのかと思ったじゃない!」
ぽかぽか、と、その可愛い拳で胸を叩かれて。ごめんね、ピクシー、と、俺は微笑む。

「……大丈夫、なのですか?」
少し、震える、声。……何だか、さっきも、同じ声が聞こえた気がするな、と俺は思い出す。

「ああ。何だろ。意思の再確認、って感じ、だと、思う」……お約束(・・・)で詳細は覚えてないけどな。
意思?と怪訝そうに聞き返す心配そうな声を聞こえなかった振りで、俺は立ち上がる。

まだ無理をしないほうが、と、慌てる周囲に、大丈夫だよ、ほら、と。
俺は少し、力を解放して、みせる
――― と、皆が、一瞬、息を呑む、気配。

『……”定まった”か』
「そのようです」
ゴウトさんと短い言葉を交わす俺を、ライドウと仲魔たちは怪訝そうに心配そうに。見る。

そう。多分、定まった。俺の”理”が。だから、力も、倒れる前より、更に強く。

「皆、心配かけて、ごめん。何とも無いから、大丈夫」

そう言って浮かべる笑顔は清浄でありながら。その紅の瞳が映す、己の未来は無情。
もう、誰も触れることができない領域に行ってしまった彼は、何でもないように言葉を放った。

「行くよ」

光無くば闇もまた無いと知りながら、永遠の戦いを止めぬ愚かなモノたちの傀儡(くぐつ)と、なりに。




Ende

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