サキサダマリテ 05




……静かだ……静かすぎる………

…そうか……

虚無が……私を迎えに来たか………





「サキサダマリテ シズカナリ」

今のあんたを見てると、思い出したよ。
この場所を去る間際。そう小さい声で落として、去って行った創生の悪魔。
言の葉を操る魔物は、最後までそうやって私の静寂を乱す。


「シズカ、か」

シジマ。静かなる理。
ゆるゆると止まったような時を生きる穏やかな静寂の世界。
欲の無いそこでなら、きっと君も、誰からも害されずに生きていける、のに。


――― 牡丹花は 咲き定まりて 静かなり 花の占めたる 位置のたしかさ

「確か木下利玄……牡丹花、か」

牡丹。
百花の王。
白き静かな(おもて)と赤い情熱の内を持つ鮮やかな(かさね)

「その鮮やかな称号は、君の最後の理に捧げてやりたまえ」





◇◆◇




「……力を持つ者……欲望の覇者よ……」

我が静寂を乱し、制し、服した、美しい悪魔。



「おまえの望む世界を……築くがよい…」

今度こそ。君の望む世界を。そして新しいルートを拓いて、どうか今度こそ。幸せに。



けれど。



もう……



「…私には…関わりのない事だ………」






Ende


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