何度、巡っても、同じ。
共にシジマの創世を為し、共に穏やかな暮らしを望んでも。
いや、君を失うくらいなら、私自身が贄にといくら、望んでも。
いつも。引き換えになるのは、いつも。君のほうだった。
けれど。
このルートは初めてのケース。
シジマでもヨスガでも現世でも、全てを拒絶した真の虚無ですら、無い。
君はおそらく真実に近づいたのだ。あの哀れな輪廻を巡る“観察者”の意味まで悟って。
「カミゴロシにはさせたくなかったか」
「……何のこと?」
「一人、足りぬようだ」
「!……」
一体ではなく、一人。それだけで君にはよく分かっている。
いつからか君の傍に居た黒い男。常に君から離れぬ彼をここにつれてこなかったのは。
彼を呪われた輪廻に引き込まぬためだろう?
人の身で神を殺せば、いかなる理由があろうとも祟られる。あのヒジリのように。
きっと、君は、私のときと同様、どの理の神の前にもあの人間を連れて行きはすまい。
懸命な、と感嘆し。不憫な、と慨嘆した。
葛葉ライドウと言ったか。ルシファーが引き込んだ新しい黒い異分子。
コトワリ争いには問題が無いと判断して、放置していたのが間違いだったか。
いや、それとも正解だったのか。
けれど君の願いはきっと叶わない。
いつか彼も叫ぶだろう。私のように。彼も追い求めるだろう。私のように。
それでも、救いは。
「彼はまだ人間であるからな」
「……」
カミゴロシでもせぬ限り、有限の命で居られる。
私達のように、巡り続ける閉じた地獄で、見果てぬ夢を見続けることも無い。
「羨ましい、ことだ」
(終わりがあるということは)
「そう、だね」
羨ましいね、と。その対象を思い出したのだろう。
ふわりと、やわらかい満足げな悪魔の笑みを見ながら。
いつかあの人間もこの終わりの無い争奪戦に加わるかもしれんな、とふと、思った。