――― あれは何度目かの巡った世界。
初めて、君が、静寂の理を、選んでくれた後の世界。
創世の後、数えて、七日目。
世界が完成すると同時に、君が、消えてしまった、とき。
新しい世界のどこを探しても、もう、君が存在しないと分かった、とき。
私の静かな理は美しく壊れた。
君の、名を、狂ったように、叫んで、叫んで、叫んで。
やがて私は、次の、巡る世界を、望み、それは叶えられた。長い苦しみの後に。
――― あれは何度目かの狂った世界。
何度、巡っても、君が必ず七日目には姿を消すことに気付いて。
いつだったか。私は君を閉じ込めたことが、あった。鳥籠の鳥のように。
もうどこにも飛び立てぬように。私の前から消えないように。二度と失わないように。
けれど。
(氷川)
(何だね)
(ごめんね。……それと)
ありがとう
ある日。それだけを言い残して眠った君が。
次の朝、そのまま、二度と瞳を開かなかったとき。
やっと愚かな私は気付いた。
……私が君を創世の贄に仕立て上げていたことを。
君の体の中から、命という灯火が既に消え果てていたことを。
共に巡った世界で、これまで、今まで、ずっと。
死期を悟った優しい獣が、己の死骸を見せぬために自ら去っていたことを。
そして。
動かぬ神の器を抱きしめて、また、私は叫んだ。自分の罪と罰の帰結に。