再会 8



首に当てられた指に伝わる、トクントクンと脈打つライドウの鼓動。
戯れに少し指に力を入れると、あぁ、と、あえかな吐息を漏らしてライドウは瞑目する。

そのままゆっくり指の力を抜いて、ライドウの首から手を離すと、シュラはこつんとライドウの胸に
額を当てた。


「俺は悪魔なんだよ」
「分かっています」

「最強最悪の悪魔なんだよ」
「分かっています」

「戦いが、待ってる」
「分かっています」

「俺は行くよ」
「分かっています」

「お前は来るな」
「……置いていくのですか」

「来るな」
「どうすれば共に居られますか」

「来るな」
――― 僕が悪魔になれば」



―――――――― 連れて行って、もらえますか?


ガッ!

その言葉を聞くや否や。
ライドウの胸倉を掴んでにらみつけたシュラの、怒りと悲しみに染まった赤い瞳を見て。

――― 冗談です。すみません。と、ライドウは、眼を伏せて、笑った。



◇◆◇


じゃあ、ワカの伝言もあったことだし、悪いけどしばらく厄介になるよ。
はい。喜んで。

あ、でも力は抑えてあるけど、管に入らないとダメかな?お前の立場上。
……今の貴方が僕の管に入れると思ってるんですか?
……それも、そうだな。

でも、お前、今思えば、イケブクロで初めて会ったときは管に入れる気満々だったじゃん!
……お願いですから、あの時のことは忘れてください。

あれを忘れられるヤツがこの世に居たら、お目にかかりたいよ。
ですから、あの時は僕も必死で。

ウソつけ。覚えてるぞ、恐怖の鉄面皮が繰り出す、悪夢のヨシツネ召喚、ヨシツネ召喚。
…………まあ、それはそれとして、置いておいて。

うわ、コイツ、流しやがった。信じらんねぇ。

まあまあ。ところで、今晩、何が食べたいですか?
え……と、ちなみに誰が料理するの?

僕ですが?
……。

上手ですよ?
……。

信じられませんか?努力すれば何事も上達します。悪魔会話も上手になったでしょう?
あ、そういやお前、さっきから悪魔と会話してたな。それも何回も。
はい。先方から話しかけられることも多くなりました。

スキルアップしたんだ〜。でも、何で、ことごとく断ってたの?管、空いてるじゃん。
……(貴方目当てだと一目瞭然の輩なぞ、誰が管に入れるものですか……っ)

え?

いえ。仲魔づくりも計画的にしませんと、すぐに管がいっぱいになりますから。
ああ!分かる分かる!!俺、声かけられたら断れなくて、すぐストック埋まるんだ〜。

……ピキ。

あれ。何か怒った?
……貴方本当に相変わらずですね。(そうやって誰にでもホイホイホイホイホイホイと……っ!)

へ?



――― そんな他愛も無い会話を延々と。
…………いつか来る別れの時は、今は考えずに。

「じゃあ、とりあえず。コンゴトモヨロシク」

「こちらこそ」

そう言って笑いながら、二人は並んで階段を駆け降りた。





Ende


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今回の名言「仲魔づくりも計画的に」