ガッ!
その言葉を聞くや否や。
ライドウの胸倉を掴んでにらみつけたシュラの、怒りと悲しみに染まった赤い瞳を見て。
――― 冗談です。すみません。と、ライドウは、眼を伏せて、笑った。
◇◆◇
じゃあ、ワカの伝言もあったことだし、悪いけどしばらく厄介になるよ。
はい。喜んで。
あ、でも力は抑えてあるけど、管に入らないとダメかな?お前の立場上。
……今の貴方が僕の管に入れると思ってるんですか?
……それも、そうだな。
でも、お前、今思えば、イケブクロで初めて会ったときは管に入れる気満々だったじゃん!
……お願いですから、あの時のことは忘れてください。
あれを忘れられるヤツがこの世に居たら、お目にかかりたいよ。
ですから、あの時は僕も必死で。
ウソつけ。覚えてるぞ、恐怖の鉄面皮が繰り出す、悪夢のヨシツネ召喚、ヨシツネ召喚。
…………まあ、それはそれとして、置いておいて。
うわ、コイツ、流しやがった。信じらんねぇ。
まあまあ。ところで、今晩、何が食べたいですか?
え……と、ちなみに誰が料理するの?
僕ですが?
……。
上手ですよ?
……。
信じられませんか?努力すれば何事も上達します。悪魔会話も上手になったでしょう?
あ、そういやお前、さっきから悪魔と会話してたな。それも何回も。
はい。先方から話しかけられることも多くなりました。
スキルアップしたんだ〜。でも、何で、ことごとく断ってたの?管、空いてるじゃん。
……(貴方目当てだと一目瞭然の輩なぞ、誰が管に入れるものですか……っ)
え?
いえ。仲魔づくりも計画的にしませんと、すぐに管がいっぱいになりますから。
ああ!分かる分かる!!俺、声かけられたら断れなくて、すぐストック埋まるんだ〜。
……ピキ。
あれ。何か怒った?
……貴方本当に相変わらずですね。(そうやって誰にでもホイホイホイホイホイホイと……っ!)
へ?
――― そんな他愛も無い会話を延々と。
…………いつか来る別れの時は、今は考えずに。
「じゃあ、とりあえず。コンゴトモヨロシク」
「こちらこそ」
そう言って笑いながら、二人は並んで階段を駆け降りた。