「まったくもう。あれだけ状況整えて、接吻だけなんて!」
「…………」
不機嫌そうにぼやく釜鳴オネエサマを見ながら。
一体、どこから、そして、どこまで見てたんだ、と詰まりたくなるのをとりあえず抑える。
「ま、でも、そこがいいのよね」
ライドウちゃんもシュラちゃんも、ホント見たとおりにキレイなんだから〜。
うん、うん。そうよね〜。と複数のオネエサマ方が頷く。
「しかし、なぜ、ここまで?」
ライドウはともかく、シュラは今日見知ったばかりの他人。
いくら可愛かろうが、売上に関わるようなことまでするだろうか。
形は違えど、この「苦界」に生きる者達が。
「……あの子の目かしらね」
うん。そうそう。それと、あの笑顔よね。と皆が頷く。
「目?」
「私たちってさ、どうしても、良くて物珍しいモノを見る目。悪くて汚らしいモノを見る目で
見られるのよね」
それは仕方ないことだって、わかってはいるけど。
「……」
「でも、あの子は。何ていうのかな。暖かい目で。ううん、同情とかじゃなくて」
普通に「人」として、普通に見て、普通に笑ってくれてる気がしたの。
あんなに優しく何の含みも無く笑いかけてもらったのって……もう覚えてないくらい前だわ。
しん、とする。……それはどの人も同じ思いということ。
悪魔にすら優しく笑いかける彼が、このオネエサン達をそんな目で見ないのは当然だけれど。
それにね。ライドウちゃん。
これだけは覚えておいてね。
私が、ライドウちゃんに会えなくなるの淋しくない?って聞いたとき。
「そりゃ淋しいですけど」って、あの子、笑って言ったけど。
その時の、あの子の笑顔が。
「ふわぁ〜、よく寝た〜」
あ、もう大分遅いよね。そろそろ着替えて、帰ろっか?
のんびりとあくびをしながら問う彼に、そうですね、と返す。
ああ、オネエサン達に挨拶しないと。
ビックリしたけど、面白かった〜と笑う彼は本当に大物だ。
だけど。
できれば。
もう。
「できれば、もう、嘘はつかないでくださいね」
貴方が優しい嘘つきだってことは、嫌と言うほど分かってはいるけれど。
「ライドウ?」
「……苦しいなら、苦しいと言わないと。また息ができなくなりますよ」
「……うん」
帯の話だよね。うん。反省しています、と神妙な彼に溜息が出る。
わざわざと逃げ道を作っている自分にも。
「笑顔が?」
「諦めた笑顔だったわ」
こんなトコロだから、親に捨てられたような境遇の者も多い。
「そんな子が、親に会いたい?って、聞かれたときに「会いたいけど」って言うときみたいな」
こんなトコロだから、恋人ができても、連れ添うことなど万に一つも。
「そんな人が、恋人と一緒に居たい?って、聞かれたときに「居たいけど」って言うときみたいな」
自分には、そんな幸せなんて、絶対に来るはずが無いから。
諦めて、笑う、悲しい顔。
あんな顔、させちゃダメよ。ライドウちゃん。
二人手ヲ取リ語ルコト、
皆イチイチニ嘘ゾカシ。
一人デ居テスラ、コノ男
己レト己レヲタバカリヌ。