怖かったのです。
ピシャリと水を跳ねさせて、悪魔を背中から抱きしめた男はその耳にそう懺悔した。
何が?
ふる、と身体を揺らして、悪魔はそう男に答えた。
貴方に触れるのが。
ぴちゃりと、耳にその舌を絡ませ、更に罪を深めながら、男は懺悔を続ける。
どう、して。
ぴく、と頭をその男の肩に寄せ、掠れた声で悪魔は尋ねる。
分かりませんか?
……分からないよ?
あどけなく首を横に傾げる悪魔に、男はくすり、と笑う。
だって、ほら。聞こえませんか?
何が?
触れたところから、貴方が欲しい、ホシイ、ほしい、って。
言いながら、男は悪魔に触れる。透明な湯を介在して。怯えさせぬように。触れすぎぬように。
それが、怖いの?
ええ。とても。だって、醜いでしょう?
お前が?……どこが?
……。
ただ一言で自分を癒してくれる悪魔が恋しくて。触れる指の力は増していく。
今は?
今も怖いですよ。でも。
……でも?
もっと怖いことがあると、よく、分かったので。
……ふぅん。
曖昧な言葉を返してくれる優しい悪魔が愛しくて。
気が違ってしまいそうなほど愛しくて。
触れる指は温い湯よりも高くその熱を上げる。
それと。触れて、貴方の命を全て返してしまったら、本当に一人きりになってしまう気がして。
……うん。
怖かった、のです。
男の指に熱を点されて、悪魔の肌の温度もゆるりと上がる。
そ、れで、顔、も見な、かったの?
震えて、うわずる声が愛しくて、男は目の前にあるうなじに口づけて、吸い上げる。
だって、顔を見て、瞳を見てしまったら、ばれるでしょう。
何、が?
かくり、と頭をその男の肩にもたれさせ、掠れた声で悪魔は尋ねる。
僕が貴方を
はぁと喘いだ口から無防備に覗かせた悪魔の舌を甘くからめとって、男は心の中で続けた。
――― これほどに欲しているのだと。