「……シュラ?」
訪れた静寂が、なぜか少し不安で。悪魔召喚師は最愛の悪魔の名をそっと呼んでみる。
す、ぅ。
(もう、寝ました、か)
健やかに、というよりは、疲れ果てて死んだように眠るその痛々しさに、召喚師の心が痛む。
悪魔の態でも消えぬ、首の、指の痕は、己のおぞましい執着の証のようで。
……これほどに、自分自身ですら、嫌悪するほど、僕は汚いのに。
――― ホントに綺麗だ。お前。
あんなに、酷いことをしたのに。くれる言葉が、ソレだなんて。
……キレイなのは、貴方です。優しくて、残酷な、悪魔の王。
――― 後、少しで満月だな。お前。
自分でも、分かる。自分の内が、変わったのが。……何だかとても暖かくて安心する。
まだ、少しだけ、欠けている、けれど。
でも、きっと、この欠落は埋まらない、はず。
貴方は僕が一番欲しい言葉だけは、きっと、くれないから。
だから、もし叶うことなら。
本当に、叶うこと、なら、だけれど。このまま、欠落が、埋まらなければ。
いや、この胸の隙間は、もう永遠に空いたままでいい。だから。
そして。小さな、小さな声で、男は自らの唯一神に、その願いを唱える。
「……シュラ」
眠る貴方の心に、届けばいいのに。
「お願いです、シュラ」
――― もう、貴方から離れて生きるなんて、僕には、きっと、できない、から。
「どうか」
他の人を、想ったままの貴方で、いいから。
「……連れて行って、ください」
地獄の、底まで。
「お願い、です」
眠る悪魔の唇に、触れずにひそりと落とした悪魔召喚師の願いは。
やがて差し込んだ、暁の薔薇色の光に、儚く溶けた。