――― ね。まだ、起きてる?
乱れた何もかもを清め整えて、夜着を纏った上から抱きすくめた彼が、ふいに囁くように話す。
……ええ。何だか、眠る気になれなくて。
うん。そう、だろうな。さっきまでのお前と全然違うから、自分で戸惑ってるだろうし。
そんなに、違いますか?
うん。ほとんど、埋まってるから。
何が、ですか。
お前の欠落。
良かった、と。
笑う貴方は。
とても愛しくて。
尊くて。
切ない。
――― 瑕に埋まったのは、その貴方の気持ちなのだと、分かって、言っているのですか?
ホントに綺麗だ。お前。
え。
今までも綺麗だったけど、どういうの?月が満ちてきたって感じ。
……昔、あんなことがあった、僕でも、綺麗、ですか。
瑕の無い、人間なんて居ないよ、ライドウ。
……。
辛かった、だろうけど。お前は汚れてなんか、いないよ。
……ありがとう。
……それでお前が汚いなら、俺はもっと汚い。
――― え?
いや。何でもない。後、少しで満月だな。お前。
まだ、少し欠けていますか。
うん。でも、もう、すぐに治るよ。
……治ってほしくは、無いのですが。
こら。それは言わない約束だろ。もう。
はい。
でも。ごめんな。
え?
いや、色々と。
謝るのは、むしろ僕の。
くす。
じゃあ、お互い様だ。俺の鬼畜な詐欺師の悪魔召喚師。
はい。
では、そういうことで。
――― 僕の愛しい、嘘吐きの鈍感王。
どちらから、ともなく、軽く口付けた後に。
照れ隠しのように悪魔がまた話し出す。
……ああ、そうだ。
何か。
"Ich habe dich lieber als alles auf der Welt."
え?
お前にやる。俺の母さんが、俺に遺してくれた言葉、らしいんだけど。
そんな!……いいのですか。
うん。「おまじない」代わり。……俺も、時々、唱えてたろ。
そう言えば、何度か、聞いたことがある、ような……。でも、「おまじない」?
お前は一人じゃないよって。自分を、大切にしろよって、「おまじない」。
……そういう意味なんですか?ドイツ語で。
うん。まあ、そんな感じ。お前は俺のFreundだから。お前にやる。
フロイント?……英語のfriendみたいな、ものですか?音が、似てますね。
そう、だな。よく似たもん。
もう一度、教えてください。
どっち?
「おまじない」の。
ああ。Ich habe dich lieber als alles auf der Welt.
イッヒ ハーベ ディッヒ リーバー アルス アレス アウフ デア ヴェルト、ですか。
……うん。ありがと。
? いいえ、こちらこそ。
……じゃあ、もう、寝る、ね。
眠い、ですか?
(くす)……さすがに、疲れた。
……すみません。
ううん。じゃあ、……おやすみ。
おやすみなさい。