――― 「愛しています」と言う雫を、何度、この乾いた身体に落とされただろう。
耳に、だけじゃなく。
その指先から唇から、身体全体に沁みこまされて。浸みこまされて。染み、こまされて。
泣きそうに、なる。……もう、泣けも、しないのに。
ごめん、な。ライドウ。
後、少しだけ。そのお前の気持ち、もらってて、いいかな。
俺が居なくなる前には、絶対に言うから。それが錯覚だって、こと。ちゃんと言うから。
きっと朝までに、俺の命は全部、俺に戻ってくる。
きっとお前も分かっている。だから、怖かったんだろ。
ホントは、俺も、怖かったのかもしれない。
だから、こんなことになるまで、接触を避け続けたんだ。
お互いに、不器用な、鈍感な振りをして。
だって、俺の命が戻って、お前の瑕が治れば。
……もう俺がここにいる理由は、何も無くなると分かっていたから。
――― 貴方の優しさに、こんなにも心を染められて、満たされて、いるのに。僕は。まだ。
好きだ、と言ってくれた。
あんなに酷い目に遭わせてしまったのに、それでも、笑って。好きだと。大切だと。守りたいと。
でも、あの言葉だけは、くれなかった。
あの赤い紅い部屋で。
血の味の口付けと共に、貴方が僕に呪いをかけたあの言葉。
「愛してるよ、アヤ」
お前だけだ、と、貴方はあの時、言っていた。
おそらく、ヒトだった頃の貴方が、世界の何よりも愛していた、そのヒトに捧げた愛の言葉。
……なんて欲深いんだろう。
こんなに癒してもらっているのに、それでも愚かな僕の心は叫ぶ。
同情など、いらない。
優しさなど、いらない。
僕だけを、愛していると、言って、ください。
……嘘でも、いいです、から。
◇◆◇
「あ、あぁっ……!ラ、イドウ……っ」
約束どおり、焦らすことなく追い詰める。
ええ、僕ももうそんな余裕など、欠片も。
ああ、そして、悪魔の貴方の肢体は何て。
「シュ、ラ」
耳朶に口を寄せて呼ぶと、貴方はヒクリと震えて。それすら愛しくて。
「あ、あぁ。な……に?」
「本当に綺麗、です。貴方、は。感じると、薔薇色に染まって。暁の空のように」
ビクリと。震える。首を振るその動きは……感じて、ではなく。……これは、怯えて?
「……それ、言わ、ないで」
え?
悲しそうな瞳。泣きそうな声。
傷つけた?どうして?
その僕の戸惑いを消そうとしたのか。
彼はこの夜初めて、自分から僕の唇に貪るように喰らい付いてきた。