気付いていた。
僕がボルテクスで、その気を上手く扱えずに、知らず弱っていったように。
貴方もまた、この地では。
よく考えれば当前の、こと。
管に入った仲魔ですら、使役時にはマグネタイトが必要な、この世界で。
常に外に出ている、貴方が。では、どうやって動くためのエネルギーを得ているのかと。
己の足元にも及ばぬ、そして己を崇拝する悪魔を殺すことなどけして、できない、貴方が。
「何度か、お前のを、くれようと、してくれた、だろ。マグネタイト」
でも、受け取ってはもらえなかった。
あの時も、あの時も、あの時も。……さっき、も。
どんなに弱っていても、気を失っていても、眠っていても、身体を繋げていてさえ。
貴方は、絶対に僕からはソレを受け取ろうとはしなかった。かたくなに。
雷堂のそれは、受け取って、いた、のに。
貴方から、彼の残り香が漂うたびに。
……僕が、どれほど。
「雷堂さんに、協力してもらってたんだけどさ」
やっぱ、それも気付いてた?
あっさりと白状する彼に戸惑う。……協力?
「一度、アカラナ回廊で、マグネタイト不足で死にかけたことがあってさ」
え?
「そのときに、歯止めが利くなら問題ないから、自分ので補えって、言ってくれて」
「歯止め?」
聞かれて、困ったように彼が笑う。
「さっき、言っただろ。……止まらなくなるって。相手がお前だと、さ」
照れた笑顔に、醜い僕の心の塊が氷解されていく。 それが、理由? そんな、理由で。
「俺は、燃費が悪いからな」
ほら、トウテツがさ。武勇伝みたいに、お前からマグネタイト吸い尽くした話をしてて。
三日間起き上がれなかったって、聞いたから。
混沌王が歯止め無く喰ったら、考えるだけでも怖いだろ。いくらお前でも自殺行為だ。だから。
――― お前からはマグネタイトはもらえないよ。
「雷堂さんも、お前のこと、好きだからさ」
心配してたぞ。おかげで協力してもらえたんだけど。
ああ、どこまでも罪作りな。
彼は、貴方のことを、心配して、いたの、だろうに。
混沌王、じゃなくて、鈍感王に改名したらどうですか。
「え?また、泣いてるの、何で」
どこか焦ったような声になる貴方が愛しい。愛しすぎて、苦しい。
「ほら、鳴海さんだって、タエさんだって、もちろんゴウトさんだって、お前の周りはいい人ばっかり
じゃないか。皆、お前のことが好きで、心配してるって分かってる、だろ?」
そんなお前から命吸うわけにいくかよ。
……っ。 ああもう! 何で、余計に泣くんだよ!!
そう困ったように言って、
ふわりと、優しく頭を撫でるその手に、また、涙が出る。
そして、その撫で方は相変わらず、絶妙で。……困る。
暫くして、貴方がポツリと言う。
「そう、だな。泣くな、って、言ったけど。撤回するよ」
泣いていい。
きっと、そのほうが楽になれる、よな。
なあ。……置いて行かれるのも辛いけどさ、置いて行くほうだって、辛いんだよ。ライドウ。
大丈夫。お前はきっと、その瑕を癒せる。
ああ、ほら、こういうのなら、俺でも分かる。
もう、大分、治ってきたじゃないか。塞がってきたのが、分かるよ。
治癒力、高いな。お前。
……あ。
しまった。俺が撫でてたら、違うところも回復しちゃったか。ホント治癒力高すぎ。
……いいよ。皿まで喰ってやるから。
じゃあ、今度こそきちんと最後まで責任持って、「殺して」くれよ。
もう、焦らすのは勘弁な。時間も無いだろ?
――― 朝までっていう約束、だろ。