きっと 知らない 1




僕の悪魔は恥ずかしがり屋だ。

追い詰めた後は少し気まずい。
疲れ果てた風情で、瞼を開けるのも億劫そうにこちらを見る。
そのとろりとした視線がまた僕の欲をどろりと煽るとも知らないで。

何度、抱いても。
喰らっても喰らっても足りない。
本当は違う形で貴方が欲しいのだと言っても、正気の時の貴方はけして首を縦には振らない。

理性では理解している。これは最強の悪魔である貴方の気遣い。
自分の力量以上の悪魔の精を人の身で受ければ、よくて虜。普通で発狂。運が悪ければ、即死。
精神が肉体がその大いなる異物に耐え切れない。それは理解しているけれど。

(死んでも構わないのにと言えば、二度と会ってももらえないと分かるからできないけれど)

いつだったか。
お前こそが魔物のようなのに、と。言われた。
お前の精を受けて、狂ったヤツはいっぱい居るだろ、と。

否定しきれずに黙っていると、もう二度とこの話はすんなよと苦い笑いで言われた。
嫌われたか呆れられたか軽蔑されたかと恐ろしい速度で落下する心は、たった一言で救われた。
俺は嫉妬深いんだよ、の一言で。

ずっと共に居たいのだと、何度言っても聞き入れてもらえないのはもう慣れた。
慣れたくも無いのに。慣れさせられた。
本当に貴方は酷い悪魔だ。

喰らっても喰らっても足りない、のに。
できることならずっとヒトツになっていたいのに。

きっとそのときになれば貴方はあっさりと僕を捨てていくのだ。死ねとばかりに。



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