きっと 知らない 2




俺の好きな人はちょっと変わっている。

俺なんかのどこがいいんだ、と何度も言ってみた。
言ってみたが、じゃあどれだけいいのか思い知らせてあげますと壮絶な笑顔を向けられた。

足りない。何度抱かれても足りない。
ずっと触れているから余計に飢える。だから触らなきゃ良かったのに。
お前が大切だからこれ以上何も出来ないと言っても、お前の瞳は納得の色を見せない。

皆は俺のことを、最強の悪魔と言うけれど。
ある意味、それは間違っていないから否定はしないけれど。
俺のせいでお前が壊れたら、俺はもう俺で居られない。それぐらい俺は弱い。だから。

(本当は何もかも欲しいのだと本心を見せて、浚っていけたらいいのだけれど)

よく思う。お前の方こそ魔物の中の魔物だ。
俺ですらこの有様だ。これまで、お前の虜になった人間どもの末路など考えたくも無い。
きっとその闇もルイの好みなのは分かっているけれど。分かっているから。

だからもう昔の話は聞かない。二度と聞かない。
お前と繋がったヤツ全員消滅させちゃまずいだろ。
何度も言わすな。俺は嫉妬深いんだよ。お前に関してだけは。

一緒に居ることはできないと、口にするのはもう飽きた。
言いたくも無いのに飽きたくも無いのに飽きるほど言わされた。
本当にお前は酷いヒトだ。

足りない。止まらない。食い尽くしてやりたい。
ほんの一口でも喰ったら止まらないのは俺のほうだ。

食い尽くしても足りない。俺の中で俺とヒトツにしても足りないのに。

そんな欲を知らないお前はいつまでも穢れない瞳で俺を糾弾する。悪魔殺しのその瞳で。


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