「う……ん?」
ふ、と。布団の中で、と眼を覚ました、悪魔は。
自分を束縛する、優しい腕の温度に、びくりとする。
(運んで、くれたんだ。え……っと、///……清めて、くれて、るし)
気を失った自分が情けないような、それほど追い詰めた相手が憎らしい、ような。
知らず、悪魔の態に戻っていたのか、ひやりとする自分の肌に、温度を与えるその身体は。
泣きそうなほどに、温かい。
そう、と顔を上げると。そこには。
予想通り、すぅ、と寝息を立てる、白い肌。
睫毛、長い、なぁ。
まばたきしたら、パサリと音がしそうだ。
その瞳、見たい、けど。今は、いい。
きっと、嘘が、ばれる。
上げていた顔を戻すと、トクリ、と届く、鼓動の音。
命の、流れる音。
これが、俺のコトワリの音。
これさえ、守れれば。それで、もう。
紛い物でも、錯覚でも、この愛してもらえた記憶が、あれば。
それだけで、俺は。
――― 大オジは、守れなかった、って言ってた。
辛そうに、哀しそうに、そう、言ってた。
誰よりも大切な従兄妹だったのに、って。
俺とそっくりな、俺と同じ名前の、大オジの、初恋の人。
……俺は、守れるかな。
俺が、持ってるもの、全部、使えば。
コイツ、守れる、かな。
もう、さ。
俺が、祈る神も、悪魔も、もう、きっと、どこにも居ない、けど。
それでも、祈るよ。
……どうか、お前が幸せで、ありますように。
その為なら、俺は、もう、何も、要らない、から。
……どうか、早くお前が、俺のコトなんか忘れて。
優しい、美しいヒトを見つけて、愛して、幸せに、なります、ように。
――― キリ、と軋む胸の痛みを見ない振りで、再び眼を閉じた悪魔は知らない。
その痛みに同調したその人が、ゆっくりと眼を開き、哀しそうに、腕の中の悪魔を見つめたのを。