キョウジ 1



「なぜ、本気を出さねぇ?」
「その必要が無いから」

ふざけんなぁ! てめぇ!!、と。
コイツ以外の相手なら、即座に怒鳴っているところだ。と、男はグルンと思考を回す。

「クッ、言ってくれる」
「真実だろ?」

チロリとこちらを見る金色の瞳に、その通りだと跪きたくなる自分の体を男は必死で止める。

(初手で俺様の繰り出した攻撃を、全てかわしやがった。いや、当たっていたとしても)
今のコイツは、きっと、傷ヒトツつかねぇ。それぐらいの“熱量”じゃ。


「それより、まだやんの?キョウジ?」
――― 。……ああ。これぐらいじゃ、足りねぇ」

(く、そ。“声”まで、パワーアップしやがって)
とろりと心臓を舐め上げられるような声が、キョウジと甘く響かせる音をダイレクトに受けて。
ブルリと寒さではない何かが男の体中を震わせる。

ああ。真実だ。オマエのその言葉は真実だ。くっそ。ゾクゾクしやがる。
対峙しているだけで、まだ本気を出してねえおめぇを見てるだけでイっちまいそうになる。

冷や汗が出る。怖気がクる。足が竦みやがる。ああ、そうか。コイツは。もう。



――― 俺様の知ってる、アイツじゃねぇ。



next→

帝都top