ゲンザイ 11



「ライドウ」

「……シュラ」

目覚めると、明るい朝の光が窓から注ぎこんでいて。
貴方の心配そうな瞳が、僕を覗き込む。

「大丈夫?酷く、魘されてたけど」
「え、っと。そう、でしたか?あまり、よく覚えて、いなくて」

悲しそうな顔を見たくなくて、僕は嘘の混じる真実を言う。

(ええ。よく、覚えて、いません。……この、心の臓を抉るような、罪悪感、以外は)

哀しい嘘の報酬は、ほっとしたような、貴方の、笑顔。

……今の、僕には、この笑顔しか、きっと、守れない、から。
だから、僕は、平気な振りをするのだ。貴方が居なくなっても、大丈夫な、振りを。

――― 優しい貴方が安心して、笑って、僕を捨てていけるように。



「珍しいな。お前が、夢に、魘される、なんて」
また、どっかの夜魔にでも、一目惚れされたんじゃねーの?
モテ過ぎる、悪魔召喚師も大変だね。ライドウさん?

軽口を投げる彼を、怒った振りで睨む。
からかわないで、ください、と。

ごめんごめん、と笑って。
じゃ、水でも持ってくるよ、待ってて。と

くるりと後ろを向いた貴方の背に。






僕の刀が刺さっていると、見えたのはきっと、






――― 夢では、無い。





Ende

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後書きは反転です。

具体的に何かを覚えているわけでも、思い出せるわけでも、無いのに。
罪悪感という不明瞭な何かが、心を浸食し続ける、ゲンザイ。

……なるほど、宗教に逃げたくもなるな、上手くできたマインドコントロールシステムだね、と。

人の造った、その“仕組み”に、ただ、戦慄。