Balance 1





我が君

我が主

我が神

我が心の全てを縛る御方

我が最愛の、混沌の





「・・・ぅ、・・・んっ」

ねちゃりと、
粘着質のある湿った音が、耐えたようなうめき声を、甘いそれにゆっくりと変える。

(意識が無くとも、彼は強情だからね。欠片も傷つけたくないというなら、使うといい)

他者に触れられることに強張る肌は、地獄の神が意味ありげに渡した薬でようやく溶けた。




「んっ・・・んぅっ・・・」

がしゃりと、
無粋な金属の響きが、ともすれば幻想へ逃げようとする男の意識を、現実に引き戻す。

(ただ、完全に落ちるまで、鎖は解かないほうがいい。私の宝石が自分で自分を砕かないように)


魔界最強の。媚薬。己がそんなものを、この方に、使うことがあろうとは、思いも。




「んっ、ん・・・ぁっ・・・あっ、・・・っ、ぃ、ゃっ」

くちゃりと、
己を侵食する異物を、ようやく快感と認識した少年の口の拘束を、男は優しくはずす。

(アレはトラウマだろうから可哀想なのだけど。狂った彼は舌ぐらい平気で噛むからね)

今はもうその程度の傷では死ぬこともできぬ、ただ苦しみを輪廻する主を慰撫して下僕は詫びる。




「・・・どうか」


お許しを。




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以前から、裏設定としてあった話です。
それとなく匂わせてはいたのですが、一度きちんと書いておこうと覚悟しました。