「・・・ぅ、・・・んっ」
ねちゃりと、
粘着質のある湿った音が、耐えたようなうめき声を、甘いそれにゆっくりと変える。
(意識が無くとも、彼は強情だからね。欠片も傷つけたくないというなら、使うといい)
他者に触れられることに強張る肌は、地獄の神が意味ありげに渡した薬でようやく溶けた。
「んっ・・・んぅっ・・・」
がしゃりと、
無粋な金属の響きが、ともすれば幻想へ逃げようとする男の意識を、現実に引き戻す。
(ただ、完全に落ちるまで、鎖は解かないほうがいい。私の宝石が自分で自分を砕かないように)
魔界最強の。媚薬。己がそんなものを、この方に、使うことがあろうとは、思いも。
「んっ、ん・・・ぁっ・・・あっ、・・・っ、ぃ、ゃっ」
くちゃりと、
己を侵食する異物を、ようやく快感と認識した少年の口の拘束を、男は優しくはずす。
(アレはトラウマだろうから可哀想なのだけど。狂った彼は舌ぐらい平気で噛むからね)
今はもうその程度の傷では死ぬこともできぬ、ただ苦しみを輪廻する主を慰撫して下僕は詫びる。