契約 裏話2










覚えていない、など、真っ赤な。














この生で、初めて出会ったあの時。
お前は、黒い、天使のように、見えた。



無事で良かった、と
幼い我を抱きすくめて、お前は笑った。



やっと、会えましたね、と。
身も心も魂も奪う、悪魔の笑顔で。



やっと、会えたと、
我もまた心のどこかで、思った。だが。



いつか、気付いた。
その色はお前と、同じでは無いことに。









彼らを送った後に倒れ付した我を介抱して。
無事に戻られたようですよ、とお前は微笑み。



良かった、と。安堵の溜息をつく我に。
妬けますね、とお前は笑った。



少し前にも、お前はそう言って、笑った。
あの男にけして触れるな、と命じた我に。



そんなにあの男が大事ですか、と。
心配しなくても、獲って食ったりしませんよ、と。



少し拗ねたように、からかうように。詰る、ように。
初めて出会ったあの時と、寸分違わぬ外見で。



獲って食ってくれればいいのだ。あの男では無く、我を。早く。
そうすれば、お前は気付くだろう。我の中身が嘘で詰っている、ことに。




この生が、お前の納得のいくように終われば。
お前は我を、お前のモノにすると、言った。



それが、前の生で我がお前に望んだ唯一のコトだったから、と。
・・・理解はできた。我「も」また、それと同じことを望んでいたから。



早く終わらせたい。そうすればお前は気付く。
その瞳もその声もその指も何もかも、捧げる相手は別に居ることを。



あの男に触れれば、お前は気付いたろうか。
我が、偽物だと、いうことに。



旦那様?と、笑う頬に触れたくても、この腕は動かない。
深く触れれば、きっとお前は気付くだろう。



つれない方ですね、と。寂しげな瞳が我を断罪しても、この指は動けない。
どんなに、触れたくとも。死ぬまで、我はお前には触れられぬ。









偽物だと気付いたお前は、我を捨てるだろう。
捨てて、本物を探して飛び去るだろう。



でも、きっとその時は。
我は、死んでいるから。もう、苦しくは、無い。







言えるはずも無い。この誰よりも悲しい悪魔に。
お前は、人違いをしているのだ、などと。






言えるはずも無かった。この誰よりも愛しい悪魔に。
お前が”契約”した相手は、他に、居るのだと。







・・・そこに、居たのだと。









Ende



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だから、すまぬ、と。