「やれやれ。またかい」
反転魔法は、疲れるのだよ。大体せっかく綺麗さっぱり壊したのにと、金髪の男は不満げだ。
「何言ってんだよ。このサイズの箱庭ぐらい、どうってこと無いだろ?だいたい、ワカだって」
俺が来るまでにも、ライドウが壊れるたびに、何度も反転魔法使って修正してるくせに今更何を。
呆れたように返す混沌王に、魔王の分体はニィと笑う。おやおや、知っていたのかい、と。
「ここは、気晴らしにいい所だからねぇ。でも、そろそろ飽きてきたから、彼さえ手に入れば、壊してしまってもいいとは思っているのだよ?」
君さえ良ければね、と微笑むワカに、また、シュラは溜息をつく。
「でも、まあ。もう、ライドウ。二度と言い出さないと、思うよ」
「そうかい? ふふ・・・本当に、君は優しい、からねぇ」
欲しければ、とっとと全部壊して奪ってしまえばいいのに。
「ふん。同じ台詞、返してやるよ、ワカ」
あいつがゆっくりと、堕ちていく過程すら楽しんでいるくせに。時間のあるやつはこれだから。
ふふ、と微笑むだけの外人の表情はその言及を否定しない。
「だけど。そうだな、次に、あんなふざけた台詞言ってきたら」
「どうするのだい?」
「今度こそ、魔界に攫っていく」
泣いてもわめいても知らない。こんな帝都から引き剥がして、俺しか見えないようにして。
「ふ。守護者を失くしたこの帝都がゆっくりと時間をかけて腐っていくのを放置して、かい?」
これまで君がやったように、一晩で痛みも知らずに壊されるほうがさぞかし楽だろうにねぇ。
「不満か?」
「とんでもない」
それでこそ、悪魔の中の悪魔というもの。私も誇らしいよと、笑う男の影で。
混沌の悪魔はけれど、何かを諦めたように瞳を閉じた。