Vintery, mintery, cutery, corn,
Apple seed and apple thorn;
Wire, briar, limber lock,
Three geese in a flock.
One flew east,
And one flew west,
And one flew over the cuckoo's nest.
Mother Goose 「The cuckoo's nest」
微かな音で、男は目を覚ます。
ぼんやりと明るい、どこか重い、大気。
は、と、大切なことを思い出して、隣に居るはずの気配を確かめる。
起こさぬように、そっと、けれど。”怯え”で、微かに震える指をその人の頬に触れさせて。
――― その温度と呼吸を確かめて。
男は、深い深い、安堵の溜息をつく。
安心した故か、耳に入ってきたのは、次の季節を呼んでいるような、優しい響き。
「……雨か」
それで。だろうか、いつもより、どこか浮き立った気持ちに、なるのは。
……いや、この感情は隣に、この人が居るからか、と、今更ながらに思い当たり。
甘い吐息と確かな体温、ときにフルと揺れる睫毛を感じて上がる、不埒な感覚を断ち切るように
朝食の準備でも、するか、と。男は体を起こす。
隣で寝息を立てる人に、冷気が届かないように、気を遣って。
(熱は、無いようだが)
白い布に埋もれて、死んだように眠るその人の、顔色は、あまり良くない。
布団をかけ直し、ベッドの脇から、額に、右の薬指を触れさせて、男の眉は心配そうに、寄る。
(この1ヶ月、ろくに休みも取らずに)
アメリカで新しく始まるプロジェクトに突然に参画することになったその人は。
その為の前準備と、残していく業務の引継ぎで、多忙を極めた。……周囲が空恐ろしくなるほどに。
(貴方は、いつも、無茶をするから)
休みには、どちらかの部屋で、共に過ごすようになって、半年。
週に一度、会えるか会えないか、それだけの、逢瀬でも。男には至福の時間だった。
(やっと、想いが届いた、ばかりなのに)
気持ちを伝えて、受け入れられて。
指を触れて、手を繋いで、腕を組んで、胸を合わせて、脚を絡めて、唇を重ねて。
少しずつ触れ合う領域を増やしていった、日々。
(やっと。傍に居れるようになったのに、また)
しばらくは、離れ離れだ。西と、東。アメリカと、日本に。
突然に。
ピィ、と鳴く声が、惑う男を振り向かせる。
窓辺近くに鳥篭。中には、1ヶ月ほど前、強風の日にはぐれてきたのだという、セキセイインコ。
手乗りの、まだ若鳥。
……ああ、朝食の準備をするつもり、だったのに、うっかりと彼に、見惚れて。
我に返った男が、ついでに水でも取り替えておくか、と、カチャと鳥篭の扉を上げると。
ピ、と響く、少し怯えたような、鳥の声。
くす。
鳥の声に起きたのか、ベッドから微かな笑いが届く。
「巣篭もり、してる、みたいだ」
「巣篭もり?」
少しかすれた、優しい音の声。
起こしてしまったか、と思いながら、彼の言葉を問い返すと。
「うん。俺とお前と……同じ巣の中で」
ピィ!と再び起こる、今度は、どこか、不満げな響きに。
ああ、お前もだね。ピピ。……そう言って、彼はまた、くす、と、笑う。
「おいで、ピピ」
召喚されるのを待ちかねていたように、小鳥はチョンチョンと止まり木から、跳ねて、降りて。
注意深げに籠を出ると、扉を持ったままのライドウに頓着せず。
パサリと小鳥は、過たず彼のほうへと、飛ぶ。
「おはよう」
水平に差し出された彼の左人差し指についと止まり。虞を知らぬ小鳥は彼のキスを、ねだる。
くすぐったいよ、と、唇にツンツンと押し当てられるくちばしに笑った彼が、チュクとそのおねだりに心安く応えるのを見て、ライドウの指からはずれた籠の扉は、カチャンと硬質な音を立てて、落ちた。
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現代パロ部屋top
某所で気が狂うほど綺麗な「
番」のお二人を見てしまったので。
現代でベッドの中でいちゃつく番の二人を書きたかった、だけなんですが。……初めは。
ええと……この不穏すぐる題名は何だ!とか突っ込まないでください……。
※小鳥さんとのキスはオウム病の危険性があるので、本当はダメ。ここでは迷い鳥なので、
念の為、獣医に見てもらい、その際に検査もきっちりしてもらった、との前提にしています。