サクラモリ 08





あ・・・れ?

何も無いはずの空間に、ふわりと、落ちる、それは。



――― 桜?



何も無いはずの、掌の中に、定められたように落ちる、一片の花弁。

音も香りも、ましてや温度など、あるわけもない世界で。



――― 春 だ よ 。 カ イ 。



聞こえた声に、甘い香に。その温かさに触れて、くすりと、カイは笑う。



「・・・“ 散 る 桜   残 る 桜 も   散 る 桜 ”・・・だろう?シュラ?」


(どうせいつかは、今咲く(キミ)も、散って。・・・全ては無に)














・・・・・・でも。
















「ありがとう」













そう呟いて

全ての無を願う彼は、それでも、そっと笑んだ



玉響(たまゆら)、掌を握り締めたまま









・・・再び開けば、最早そこに何も無いことを、誰よりも知っていた故に














さくら色の 庭の はる風 あともなし 訪はばぞ 人の 雪とだに 見む


散る桜花を伴っていた華やいだ春風もやみ、今はもう、その跡形すら、無い。
訪れた人は、せめて庭に散った花弁を、とけて消えゆく雪とでも、思ってくれればいい







Ende

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玉響=ほんの少しの、間