Weiß(白) SRW ライドウ編 1








あなたがこの街にやってくるのを
ずっと ずっと ずっと ずっと 待っていた











「今日って、さ。俺たちの、誕生日、なんだ」
「俺"たち"?」

きつく抱きしめて口付けて。逃げぬように抱きすくめた、腕の中の悪魔が。
囁くような声で、脅えたように、そのヒトの名を、今夜初めて、音に、紡いで。
夢が覚めるのを畏れるように、そっと、指先だけを、ヒトの頬に、触れさせて。
嬉しそうに、淋しそうに、哀しそうに微笑んだ、その瞬間、ヒトは理性を失った。



「うん。さっき、会った、だろ。静夜も、キョウも」
「同じ、誕生日?・・・クリスマス、が?」

触れたことの無い肌。見たことの無い表情。聞いたことの無い声。・・・そのはず、の。
それでも体中が、知っていると、覚えていると、狂ったように叫ぶ、悪魔との行為。
優しい彼が拒まないことに、甘えて。ただ、ひたすらに、喰らいつき、飲み乾して。



そうなんだ。と答える悪魔の笑顔は、どこか、儚げで。
知らず、悪魔の頬を包みこんだ白い手は、そのまま親指が赤い唇を優しくなぞりあげる。
淡い愛撫に応えるのは、困ったような甘い吐息と、惑うように、伏せられる、金の瞳。

(無理をさせた、だろうか。でも、止まらなくて。・・・止められ、なくて)


正気に戻り、悪魔の身体中に残した、己の醜い欲望の痕に、脅えるヒトに。
また、悪魔は微笑んで、くれたのだ、けれど。

平気、大丈夫・・・嬉しい、と。
こんな醜い自分を、愛してくれて、ありがとう、と。


その儚い笑顔を思い出すだけで、上がる熱を抑え。
ヒトは悪魔の手首を優しく捕え、そっと舌でなぞる。・・・己が付けた、指の痕を。

その舌の動きに合わせて、奏でられる悪魔の吐息を感じるだけで、また、ぞろりと蠢きだす、
果ても無い己の欲を制御しようと。ヒトは先ほどの悪魔の言を、ゆるりと反芻する。

”同じ誕生日”を持つ、混沌の王達。
・・・救世主と同じ生誕日。そこに何の鍵が隠されているのか。
どこかに、貴方をこの地獄から救いだせる何かが、あるのなら、どんな手を使ってでも、僕は。

「ね、ライドウ」
甘く、囁いて。惑いかける人の瞳を覗き込む、上目遣いの、金の瞳。
誘惑とも見える蟲惑的な視線と共に響くのは、擦れた音で落とされる、嬉しげな、悲しい台詞。

「これって、きっと、夢、だよね」
でも、夢でも、いい。・・・だって。
「生まれて初めて、サンタさんから、本当に欲しいプレゼントをもらえた、から」


何故、そんな、ありがちな言葉が、ヒトの心を突き刺したのか、本人にすら分からない。
でも、そう。
心の底から嬉しそうに微笑んで、そう言う、悪魔が。
ただ。愛しくて、悲しくて。ヒトの胸は、痛む。

("貴方が殺した僕"が、きっと覚えている。その常套句の後ろに隠れている、深い闇を)

クリスマスと誕生日を兼ねた、その、おそらくは子供にとって最高の記念日にすら。
貴方はこれまで、一度も、誰からも、本当に欲しいものをもらえることは無かったのだ。

その、本当に欲しいものの定義を、"今の僕"には正しく知ることは、できないけれど。

「う、うわっ、ラ、ライドウ?」

(泣き続ける幼い貴方を見て、気が狂うほどに愛しく、思ったのも、きっと"僕の知らぬ僕")
ずっと。傍に居て、あげたかった。守って、あげたかった。もう、大丈夫だからと、抱きしめて。

(僕は、間に合いましたか?・・・貴方の痛みに。・・・今日は)

でも、そんなことを言えば、悪魔の微笑みを損なう、だけな気がして。
人は。知らず落ちてきた己の涙を。愛しい髪に指を絡めて、深く胸に抱きすくめて。

誤魔化した。




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そんな事情だったものですから。・・・許してやってつかぁさい。