白鴉 1






天にも地にもやらない







ある森にウサギの家族が住んでおりました。
強いお父さんウサギに優しいお母さんウサギ。
そして可愛い子ウサギの三羽が仲睦まじく暮らしておりました。

ある冬のこと。お母さんウサギが病気になりました。
このままでは死んでしまうと聞いて、泣き出した子ウサギにお父さんウサギは森の奥の白鴉に会いに行けと言いました。

「白鴉?カラスは黒いのしか知らないよ?」
「白いカラスは森の神だからな」

わしらのような大人にはお目にかかれないが、お前のように無垢な者ならきっとお会いできるよ、と聞いて、子ウサギの瞳は輝きます。

「神様なら、お母さん治してくれるかな?」
「それが運命なら、そうしてくださるよ」

それで子ウサギは家を出発し、雪の中を森の奥へと入っていきました。



◇◆◇



「こんなところ、あったっけ?」
見慣れているはずの森なのに。見たことの無い洞窟に出会って子ウサギは頭を捻ります。

「道、間違えたかなあ。……でも、森の奥ってこっちの方向だったのに」
どうしよう、と。ピョコと動かした耳に、不思議な優しい音が届きました。

(なんだろう)
優しくて哀しい……歌?

(洞窟の中から?)
誰が歌ってるんだろう。

その声があまりに透き通って綺麗で、哀しかったので。
子ウサギは怖いのも寒いのも忘れて、洞窟の奥にぴょんぴょんと跳ねていきました。




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