「主様!早く、こちらへ!!」
「・・・っ、悪い、ウリエル」
それは。いつもどおりのフィールドの探索。手持ち資金を補充したい、とのことで。
宝探しスキルを持つ仲魔を召喚して。当然ながらエストマをかけて。
ただ、間が、そして運が悪かった。そうとしか言いようが無い。
静天後にうっかりとエストマをかけなおすのを、忘れていたことも。
たまたまシュラが崖の傍を歩いていたことも。
そこに鳥型の悪魔が群れを成して襲ってきたことも。
そして。
襲い掛かった第一陣をあっさりと撃破したシュラが、崩れた足場から深い崖下に落下したことも。
その戦闘時に得た経験値で落下しながら、レベルを上げてしまったことも。
着地時に受身を取ろうとしたシュラが、思い通りに動かない自分の身体に気づいたことも。
・・・! CURSEか・・・っ!こんな、時、に・・・っ!
致命傷とはならなかったものの、したたかに身体を強打し、二重の意味で危険色を光らせるシュラを
残りの敵悪魔が襲いかかろうとする。その攻撃を受ける寸前で、主に追いつくことができたのは仲魔内では
唯一その崖の落差に耐えうる翼を持つ、ウリエル一体のみだった。
――― 元はヨスガ陣営に属したこの大天使がシュラの仲魔となったのは、つい先日のこと。
レベルアップ後に様子がおかしいソロネに変化を許すと、既に見慣れた変化時のまばゆく光る輝きを経た後に、
この白き翼の大天使が宙に佇んでいたのだ。
おそらくは、ソロネとしての記憶と、ウリエルとしての記憶が交じり合い、混濁していたのだろう。
前者としての控えめながらも誠実な瞳も、後者としての己の信念を確立させた剛い視線もその固体からは
感じられることができず。
どこか、戸惑ったように己を、己の周りを、そして主を、と順に確かめていく、その迷い子のような様子
を見て、シュラは、困ったように笑って彼に優しく言葉を与えた。
・・・彼にとっては、残酷な、言葉を。