CURSE ―呪い― 〜ウリエル編〜 2


――― ウリエルのメディアラハンをかけても、当然ながらCURSEは回復しない。

他の仲魔の到着が いつになるか分からない現状では、まずは体制を整えることが肝要。
そう考えたシュラとウリエルは、ひとまずは敵悪魔から逃走し、その身を隠すこととした。


「主様、お体の具合は?」

空中からは死角になる位置にあった横穴の奥に身を潜め、天使は主の身体を気遣う。

「う、ん。傷は、もう、大丈夫。回復、してくれて、ありがと」

「・・・いえ」

・・・傷は、ということは、傷以外は、大丈夫では、無いのだ。

必要以上に他者を頼らぬ主。それは周囲の心配性を慮ってのことではあると分かってはいるが。
今の自分には、それが「自分であるから」では無いのかと思えてしまう。
未だに、己が、この方に信用されていないからでは、と。


・・・覚えている。
忘れられるはずも無い。
この身体となる前、私という個体は一度、この方に滅せられた。
ヨスガの主の命を受け、ガブリエル、ラファエルと共に万全の布陣のはずであったのに。


・・・今でも思い出すと、悦びを内包した寒気が走る。初めて対峙したあのときの、この方の その輝くような闘気。両手からほとばしる力。緑柱石の如く光る紋様。戦いに高揚して輝く瞳。

力こそが美であり正義である、それがヨスガの理念だというのなら、この方こそが、その、具現。

故に、倒されても何の恨みも抱かなかった。むしろ、このような方と戦えたことを誇りに思った。
そう思ったのはきっと、私だけでは無い。・・・ただ、そのときに、最後に見たこの方の瞳が。


「ウリエル」
「はい」

小さい声で主に呼ばれて、天使も小さく返事をする。
CURSE状態とは言え、主が戦えないわけではない。が、同士討ちをする可能性がある限り、極力 敵悪魔に見つかるわけにはいかない。たとえ主が最強の悪魔であっても。いや、そうだからこそ。

「悪いけど、カグツチ見てきて」
「はい」
「で、右側6/8以上なら、そのまま、俺を置いて、行け」

――― 帰ってこなくて、いいから。

そう、にこりと笑いかけられて。

・・・ああ、また、と、ウリエルの心は軋んだ。



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ウチのウリエルのイメージは何と言うか

「引き裂かれる心」