・・・覚えている。
忘れ、られない。
ソロネから、今の自分に変化したときも、そうだった。
「え、と?ウリエル?だよね」
「はい」
道に迷い、親とはぐれた子に対するように優しく微笑んで、貴方は残酷なことをおっしゃった。
「お前が行きたいところに行けばいいよ、ウリエル」と。
・・・おそらくは、ヨスガに戻りたいのだろう、と、判断された貴方の、優しさから出た言葉。
でも。それを聞いて。
私をお捨てになられるのか、と悲痛な叫びをあげたのはソロネの心だったのか、それとも。
――― シュラが仲魔たちに向ける愛情は、それがどれほどに強く美しいものであろうとも
友愛の域を出ない。対する仲魔たちは誰もがそれを遙かに逸脱した深い愛情を主に捧げていたが、
それ故に誰もが己の愛情が真実報われることがあるなどとは思わなかった。
それでも、傍に、この美しい主の傍に居るだけで、それだけで幸せなのだと、いつしか誰もが。
まだ、信じられない。
愛しくて、愛しくて、愛しくて、そして、憎い。
仮にも天使である己が、このような心を抱くなど、貴方に会うまで夢にも思わなかった。
そして、まだ認められない。
ヨスガの徒であったはずの私が、何よりも貴方に惹かれている要因が。
貴方のその「強さ」ではなく、私を倒した後に見せた、あの悲しい哀しい瞳の色、なのだ、などと。
主の命に従い、カグツチを確かめに行った大天使は右側7/8のそれを見る。
そして急いで、主の元へと踵を返した。
・・・貴方のご命令なら、どんなことでも、従いましょう。
この羽根をもげと言われても、この身体を燃やせと言われても。
そう。
たとえ、元の主を殺せと言われても、今の私なら、嬉々として従うでしょう。
でも。
先ほどの、ご命令だけは、聞けません。
――― 今の、貴方を、放置して、逃げろ、などとは。