CURSE ―呪い― 〜ウリエル編〜 4


「・・・あれ?ウリエル?」

急いで戻ったウリエルが、耳にしたのはのんびりとした主の声。

――― CURSE時の主は煌天の影響で狂いを起こす。その力が強くなればなるほどに、その狂いも強く 彼の心を支配するようになった。知らず、他者も自分自身すらも深く、傷つけるほどに。
そのきっかけと要因によって、その狂い方も傷つき方もまた、様々で―――

まだ、煌天に至ってないのか、それとも、今回はCURSEの影響が少ないのかと安堵する彼に。

「俺を、殺しに来たの?」
え?

常と変わらぬ声が、不穏な言葉を紡ぐ。

「それとも捕まえて、連れて行く?」
何、を、おっしゃって。

「千晶の、所へ」
「・・・主、様?」
呆然と聞き返すウリエルに、ゆらりと向けられたのは狂った紅玉。

「いいよ。つれて いっても」
――― ころしても

「おまえが、おれに かてたら、ね」
どこか舌足らずな話し方で、楽しそうにそう言った主の手には、技を出すための光が収束していた。




◇◆◇



――― あと、少し・・・間に合う、か?

主の攻撃をかわしながら、ウリエルは出口の方へと移動し、主を誘導する。

正気を失った主の攻撃とその破壊力は凄まじく、普段どれだけその強く優しい心で、 その力を抑えているかがはっきりと分かる。だが、しかし、その力を、ここ(・・)で、使っては。

狭い横穴は既にあちこちが崩れ、ガラガラと音を立てている。
如何に主が強くても、この岩盤ごと生き埋めにされては、と焦るウリエルをせせら笑うように、
シュラはゼロス・ビートを発動させる。その光り輝く軌跡は弧を描き、触れるもの全てを破壊し。

そして、遂に耐え切れなくなった壁が、響きをあげながら崩落していく。その中でも楽しげに 笑い続ける主の隙を見計らい、腕を強引に捕まえ、すぐそこに見えている出口へと引きやる。が。
僅かに間に合わないと見たウリエルは、その衝撃から守ろうと、その身で主を覆った。


しばしの後。

「・・・主、様・・・?」
崩落がおさまったのに気づき、ウリエルは主の様子を確かめようとするが。

・・・く。翼が。
片方の翼が落石の下敷きとなって、身体を移動することができない。傷を回復させても、動かないのは 変わらず、思案するウリエルは、自らの下に居る主が、その赤い瞳を開いたことに気づく。


――― CURSEの影響を受け、赤くグラデーションを見せて輝く、その芸術品のような肢体。
それに嵌め込まれた、大いなる魔力を内包した二つの赤い宝石。
その輝きに、至近距離からひたと見つめられて。

ぞくり、と。
これまでに味わったことのない感覚を天使は得る。

そこに横たわるのは、甘美な死。その腕がゆらりと動き、天使の首にぴたりと手を合わす。
とくり、とくりと響くのは、自分の鼓動か、主の血の音か。それとも両方が交わったそれ、か。

そのもはや法悦の時に近い感覚を味わいながら、天使はゆっくりとその青い瞳を閉じた。




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漂白剤丸ごとぶっかけたように白い。