CURSE ―呪い― 〜ウリエル編〜 6


やがて、力尽きたかのように瞳を閉じた主を、傍の岩に当たらぬように腕で抱きかかえて支えた
ウリエルは、主に自分の重みがかからぬよう、片翼をパサと音を立て、体勢を変えようとする。

と、その動きに気づいたのか、再び、うっすらと主の瞳が開き、唇が動いた。

「行か、ないで」
「主、様?」

問いかける(しもべ)の翼を、きゅ、と握り、悲しげに言い募る。
焦点の合わぬ視点は、目の前の天使を見ているようで、見ていない。

「行かないで。もう、俺を置いて行かないで」
泣きそうに歪む顔。哀しげに縋る腕。

・・・今、この方が見ているのは、「私」ではない。
人から悪魔の身に落とされたこの方は、これまで、どれだけの者に「置いて行かれた」のだろう。

その「誰か」に、殺してやりたいほどの憎しみと嫉妬を感じながらも、ウリエルは自らの首にかきついてきた主 を抱きしめて、そっと言葉を落とした。

「どこにも・・・行きません」
「・・・ほんと?」
ああ、何と言う甘く哀しげな声で縋られるのか。誘っておられるのか、と錯覚するほどに。

「貴方を置いて、私はどこにも行くことなどできません」

(お前が行きたいところに行けばいいよ、ウリエル)
――― 私が行きたいところは、貴方の傍です。主様。



その答えを聞いて、安心したように微笑んで、彼の主は再び、瞳を閉じた。
(しもべ)の首に腕を絡ませたまま。


やがて、少し離れた所から、聞き知った仲魔たちの、シュラを呼ぶ声がウリエルの耳に届く。
それを聞いて、深い安堵と、少しばかりの残念な気持ちをこめた、溜息を吐いて。
ウリエルもまた、暫しの間、その青い瞳を閉じた。
腕の中の主を更に深く抱きしめて。







千晶様。

もう、私は二度と、貴方の(もと)には参れません。

私の、誰よりも強く、何よりも愛しいコトワリは、もうここに。

この腕の、中に。






Ende

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きっと、この後、えらい騒ぎに。刺すなよ、クー・フーリン。w