ムスブ 02



後から悔やむ、で、後悔。
先に立たないというそれは、オレをこのコトワリに導く最初の一歩、だったのかもなと。
オレの前に立つカオルの、少し苦しげな表情を見ながら思う。


「あいつは?連れてこなかったのか?」
「あいつ?」

「なんか居たじゃん。学生服の。綺麗な人形みたいな。何あれ、人間?悪魔?」
「……人間、だよ」

どこか非難めいた声になるお前に、ムカツク。悪魔って言われたのが気に入らないか?
そう、いつからか、居た。お前の横に。いつも。お前の影みたいに居た。黒い男。
かわいそうなお前の、人への執着が具現化したみたいな人間。綺麗で強くて賢くて優しくて?

「へえ。てっきりお前が合体で作ったのかと思ってたよ。あんまりお綺麗だから」
「勇」

久しぶりに名前を呼ばれて、背筋に電流が走る。それが責める響きでも。

「何あいつ。お前のアイジン?」
「そんなんじゃ、ない。ライドウは俺の、……仲間。“友達”だ」

簡単に出たその二文字に、久しぶりにオレの頭に血がのぼる。
へえ、お前、あのお人形サンにはえらく簡単に友達認定してやったんだなぁ。

「ふうん。じゃあ、お前、まだ懲りずに」
“友達ごっこ”してるわけ?その人形と。

オレ達には一度もその二文字、くれたことなかったのに。自分からは。

「ごっこ、?」
硬くなった声。微かに寄せられた眉。
へえ、少しは本当の気持ち出すようになったんだ。人だった頃は出さなかった、くせに。
(まあ、それはオレもよく似たもんか)

「ごっこ、だろ?お前、オレのこと友達だなんて思ってなかった、くせに」

オレの罵倒に、カオルの周囲の悪魔どもの、気の色が変わる。
散々、主を利用するだけ利用したお前が、よくもそんなことが言えるな、ってとこか。

でも本当のことだろ?カオル。
だってオレはあんなに、受胎の前も、受胎の後も。
“友達”になってくれって、叫びながら、お前の傍に居たのに。なのに。

「ああ。オレだけじゃないなぁ。お前、誰も、友達だなんて認識してなかったくせに!」

本当は、誰も。
お前は、誰一人、自分の中に入れようとしなかったくせに。
透明な綺麗な繭で自分を覆って。瑕だらけのカラダとココロを隠して。

だから。だからオレは。この、理を。
この理ならお前を守れるって、お前も喜ぶって、オレを選んでくれるって、そう。





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