後から悔やむ、で、後悔。
先に立たないというそれは、オレをこのコトワリに導く最初の一歩、だったのかもなと。
オレの前に立つカオルの、少し苦しげな表情を見ながら思う。
「あいつは?連れてこなかったのか?」
「あいつ?」
「なんか居たじゃん。学生服の。綺麗な人形みたいな。何あれ、人間?悪魔?」
「……人間、だよ」
どこか非難めいた声になるお前に、ムカツク。悪魔って言われたのが気に入らないか?
そう、いつからか、居た。お前の横に。いつも。お前の影みたいに居た。黒い男。
かわいそうなお前の、人への執着が具現化したみたいな人間。綺麗で強くて賢くて優しくて?
「へえ。てっきりお前が合体で作ったのかと思ってたよ。あんまりお綺麗だから」
「勇」
久しぶりに名前を呼ばれて、背筋に電流が走る。それが責める響きでも。
「何あいつ。お前のアイジン?」
「そんなんじゃ、ない。ライドウは俺の、……仲間。“友達”だ」
簡単に出たその二文字に、久しぶりにオレの頭に血がのぼる。
へえ、お前、あのお人形サンにはえらく簡単に友達認定してやったんだなぁ。
「ふうん。じゃあ、お前、まだ懲りずに」
“友達ごっこ”してるわけ?その人形と。
オレ達には一度もその二文字、くれたことなかったのに。自分からは。
「ごっこ、?」
硬くなった声。微かに寄せられた眉。
へえ、少しは本当の気持ち出すようになったんだ。人だった頃は出さなかった、くせに。
(まあ、それはオレもよく似たもんか)
「ごっこ、だろ?お前、オレのこと友達だなんて思ってなかった、くせに」
オレの罵倒に、カオルの周囲の悪魔どもの、気の色が変わる。
散々、主を利用するだけ利用したお前が、よくもそんなことが言えるな、ってとこか。
でも本当のことだろ?カオル。
だってオレはあんなに、受胎の前も、受胎の後も。
“友達”になってくれって、叫びながら、お前の傍に居たのに。なのに。
「ああ。オレだけじゃないなぁ。お前、誰も、友達だなんて認識してなかったくせに!」
本当は、誰も。
お前は、誰一人、自分の中に入れようとしなかったくせに。
透明な綺麗な繭で自分を覆って。瑕だらけのカラダとココロを隠して。
だから。だからオレは。この、理を。
この理ならお前を守れるって、お前も喜ぶって、オレを選んでくれるって、そう。