再会 6



全ての後始末が終わったとき、おそらくは気を遣ったのだろう。
シュラとライドウを残し、他の仲魔は全て、その場から姿を消した。

『報告は我がしておく。お前は――― ゆっくり話してくるがいい』
――― 後悔せぬようにな。
最後まで居たゴウトがそう言って去ったのはついさっきのこと。

ほの暗い、それでもザザ……ンと波音を聞かせる異界の海に向かって、二人は並んで腰掛け。

長い沈黙を破ったのはライドウの方だった。

「なぜ、僕の記憶を消したのですか」
「……」
「邪魔でしたか。人間の仲間など、今の貴方にとっては最早、足手まといでしかない」
「……っ、違う!」

慌てたように振り返ったシュラに、ホッとしたようにライドウは笑った。
「やっと、僕を見てくれた」

一度も僕と眼を合わせてくれないので、あまりの不甲斐無さに愛想を尽かされたかと
「気が気じゃなかったんです」と言うライドウに、呆れたようにシュラが溜息をつく。

「何だよ〜。せっかく後腐れ無い様にしてやったのに。大体、どうして今、こんなにすっきりはっきり俺のこと思い出してやがるの?会っても思い出さないようにしといたのに」
「貴方が僕にかけた呪いの言葉、覚えていますか?」
「へ?俺を思い出しても平気になるまで思い出すな、だったっけ?そんな感じじゃないの」
「………………そんな感じですよ。だって、今、貴方はここに居る(・・・・・・・・)でしょう?」

だから思い出しても平気なんですよ。と、笑顔を返されて、
ふぅん。そんなもんなんだ〜と、いまいち納得いかない声でシュラは答えた。

「……あれから、どうしてた?」
「死んでいました」
「へ?」
――― 貴方を失って、心が死んでいたんですよ、と言えたらいいんですけどね。


「冗談ですよ。貴方こそ、ここへはどうして」
「あ〜。お節介なお方が色々いらっしゃってな〜。お前が壊れそうだっていうから、ちょっと気になって見に来たんだ。そしたら、ゴウトさんが俺の真…っと。」

「俺の、何ですか」
「いや、何でもない。まあ、ホントにお前、壊されそうだったから、うっかり、助けちゃったんだけど。
ごめんな、お節介で」

「ええ。本当に。あのまま殺されていれば、楽になれて良かったのに」
「うわ。お前ホントにそう思ってたの?えらくやる気無く戦ってると思ったら!」

「そうですよ。だから責任取ってください」
「責任?どうやって?」

その問いにスッとシュラの方に向き直ったライドウは、シュラの両手を自分の手で包み込み、
じぃっと瞳を覗き込んで懇願した。

「僕が楽になれるまで(・・・・・・・)、ずっと仲魔でいてください」

久しぶりに至近距離で見た端正な顔にシュラが赤くなる。
あぁ相変わらず、何て可愛いらしい、と斜め上に思考を飛ばしつつ、
ライドウはシュラの返事を待った。





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「思い出しても平気なぐらい幸せになったらって、言ったくせに」
『……会えただけで幸せだったわけか』