脅迫 3




「……な。他者のマグネタイトの摂取を無意識に拒否している、だと?馬鹿な!」

それは悪魔にとっての力の源。言わば食事のようなもの。それが喰えぬなどあるわけが。


「主様ハ元ハ人間デ、在ラレタ為」

お主なら、朝起きて自分が鶏になっていたなら、生きたミミズを食えるか?
そして、悪魔になっていたなら、生きたヒトを、そのエネルギーを、食えるか?


「……これまではどうしていたのだ?!」

「ソノ必要ガ無カッタノダ。悪魔トシテノ主様ガ生マレタ地、デハ」

ヒトからマグネタイトを与えられるまでもなく、悪魔が自由意志で割拠する赤い壊れた世界。
そして、嫌も応も無く襲い掛かってくる悪魔との戦いの「結果」が彼を潤し、同時に乾かした。


「ソシテ、本来ナラ、今、居ラレルベキ地デモ」

魔族しか存在しない魔界中の魔界。その魔力が濃く含まれた大気は悪魔の体には、心地よく。
そして、何より、強く黒い6枚の翼の元に庇護されて、彼は満たされながら、より虚ろになる。


「では、なぜ、今は帝都(ここ)に居るのだ?……自殺行為では無いか」

「ソノ答ハ、我等ニハ理解デキヌノダ。……人ノ、オ主ナラバ分カルノデハ無イノカ」

ヒトに寄生せねば生きていけぬ地。周囲の営みはただ空な己という悪魔を通り抜けるだけで。
その事実も、目に見えるかつて失った事象全ても、心の瑕を何度も何度も、えぐり続けるのに。

それでも、そこに、命を削ってまで、居続けるのは。


……アイツの為、か。



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