「……な。他者のマグネタイトの摂取を無意識に拒否している、だと?馬鹿な!」
それは悪魔にとっての力の源。言わば食事のようなもの。それが喰えぬなどあるわけが。
「主様ハ元ハ人間デ、在ラレタ為」
お主なら、朝起きて自分が鶏になっていたなら、生きたミミズを食えるか?
そして、悪魔になっていたなら、生きたヒトを、そのエネルギーを、食えるか?
「……これまではどうしていたのだ?!」
「ソノ必要ガ無カッタノダ。悪魔トシテノ主様ガ生マレタ地、デハ」
ヒトからマグネタイトを与えられるまでもなく、悪魔が自由意志で割拠する赤い壊れた世界。
そして、嫌も応も無く襲い掛かってくる悪魔との戦いの「結果」が彼を潤し、同時に乾かした。
「ソシテ、本来ナラ、今、居ラレルベキ地デモ」
魔族しか存在しない魔界中の魔界。その魔力が濃く含まれた大気は悪魔の体には、心地よく。
そして、何より、強く黒い6枚の翼の元に庇護されて、彼は満たされながら、より虚ろになる。
「では、なぜ、今は帝都に居るのだ?……自殺行為では無いか」
「ソノ答ハ、我等ニハ理解デキヌノダ。……人ノ、オ主ナラバ分カルノデハ無イノカ」
ヒトに寄生せねば生きていけぬ地。周囲の営みはただ空な己という悪魔を通り抜けるだけで。
その事実も、目に見えるかつて失った事象全ても、心の瑕を何度も何度も、えぐり続けるのに。
それでも、そこに、命を削ってまで、居続けるのは。
……アイツの為、か。