ツクヨミ 6



「……お前は、……いや、貴方様は?!」
「……すげぇやつ、連れてきたな」
ヤタガラスの使者が、キョウジが、共に驚愕の声を上げる。

「「我が名はアマテラス。八百万(やおよろず)の神を 統べるもの」」
シュラを守るような位置に静止したそれは、厳かな声で名乗りをあげた。


「天照大御神!」
「まさか!」
「いや、しかしこの気は確かに」
他の者達もざわざわと騒ぐ。

無理も無い。
アマテラス。
オオヒルメノムチノカミ。
おそらくは、「ヤタガラス」を名乗るこの組織にとって、これ以上は無い崇敬の対象。

「「この特異点たる箱庭に守られし、我が子孫よ。何故にこのような愚かな行為に走るや?」」
優しげなのに切りつけるような響きを持つその言葉から、かの神が非常に怒っているのが分かる。

が。
「……貴方様こそ、なぜそのような悪魔を庇われまする?」
ヤタガラスの使者の言に、周りの者も同調する。

「そ、そうだ。アマテラス様が悪魔などに追従されるはずがない!」
「だ、騙されないぞ。偽者だ!」
「大体、見ろ!あの格好を!あれでは() (がみ)ではないか!偽者に違いない!!」


その罵声にアマテラスの光量が更に増し、目を開けていられないほどになる。

と、ライドウの管の一つがその光に反応し、
「……分かった。行け」とライドウの許しを得ると、すぐさま実体化し、大声で哂った。

「ハッハァ!!面白すぎる冗談だぜ!!俺が会いに行ったときの姉上のお姿すら知らんようなヤツが、『ヤタガラス』を名乗るとはな!!」

「「……スサノオ。あなたですか」」
乱暴者の弟の姿を認めたアマテラスの眉根が寄る。

「……全くです。これでは誓約(うけい)の故事すら 知らぬ者も多いでしょう。シュラ様。異世界とは言え、このような者どもは我ら天孫の後継(すえ) として恥。消してしまっても構わぬのではありませぬか」

先程まで黙っていた、黒い三本足の鴉(ヤタガラス)が、 呆れたような声音で滔々と語りだす。

「クロウ。言いすぎだよ」
さすがにシュラが苦笑して窘めるが。
「貴方様がお優しすぎるのです。シュラ様」
このような者達が、我の名を名乗るとは!

……どうやら、本物のヤタガラスは色々な観点で怒りまくっているようだ。


「……間違いなく本物の、ようですね」
震えた声でヤタガラスの使者が呟くと、先程まで罵声を上げていた者共も、ひぃいと情けない悲鳴を上げて、その場に平伏した。



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かつてアマテラス様はスサノオが攻めてくると勘違いをされまして、
とてつもなく凄まじい「男装」をして、出迎えておられます。
その後に行われたのが誓約ですね。日本神話に詳しい方には蛇足で申し訳ない。