「……お前は、……いや、貴方様は?!」
「……すげぇやつ、連れてきたな」
ヤタガラスの使者が、キョウジが、共に驚愕の声を上げる。
「「我が名はアマテラス。八百万の神を
統べるもの」」
シュラを守るような位置に静止したそれは、厳かな声で名乗りをあげた。
「天照大御神!」
「まさか!」
「いや、しかしこの気は確かに」
他の者達もざわざわと騒ぐ。
無理も無い。
アマテラス。
オオヒルメノムチノカミ。
おそらくは、「ヤタガラス」を名乗るこの組織にとって、これ以上は無い崇敬の対象。
「「この特異点たる箱庭に守られし、我が子孫よ。何故にこのような愚かな行為に走るや?」」
優しげなのに切りつけるような響きを持つその言葉から、かの神が非常に怒っているのが分かる。
が。
「……貴方様こそ、なぜそのような悪魔を庇われまする?」
ヤタガラスの使者の言に、周りの者も同調する。
「そ、そうだ。アマテラス様が悪魔などに追従されるはずがない!」
「だ、騙されないぞ。偽者だ!」
「大体、見ろ!あの格好を!あれでは男
神ではないか!偽者に違いない!!」
その罵声にアマテラスの光量が更に増し、目を開けていられないほどになる。
と、ライドウの管の一つがその光に反応し、
「……分かった。行け」とライドウの許しを得ると、すぐさま実体化し、大声で哂った。
「ハッハァ!!面白すぎる冗談だぜ!!俺が会いに行ったときの姉上のお姿すら知らんようなヤツが、『ヤタガラス』を名乗るとはな!!」
「「……スサノオ。あなたですか」」
乱暴者の弟の姿を認めたアマテラスの眉根が寄る。
「……全くです。これでは誓約の故事すら
知らぬ者も多いでしょう。シュラ様。異世界とは言え、このような者どもは我ら天孫の後継
として恥。消してしまっても構わぬのではありませぬか」
先程まで黙っていた、黒い三本足の鴉が、
呆れたような声音で滔々と語りだす。
「クロウ。言いすぎだよ」
さすがにシュラが苦笑して窘めるが。
「貴方様がお優しすぎるのです。シュラ様」
このような者達が、我の名を名乗るとは!
……どうやら、本物のヤタガラスは色々な観点で怒りまくっているようだ。
「……間違いなく本物の、ようですね」
震えた声でヤタガラスの使者が呟くと、先程まで罵声を上げていた者共も、ひぃいと情けない悲鳴を上げて、その場に平伏した。