ツクヨミ 7



「「では、今後一切、この方に関することには不干渉と。良いですね?」」

アマテラスの声に、ヤタガラスの使者が神妙に返す。
「……承知いたしました。が、ただ、上の者が何と」

「「……もう一人(・・・・)、呼んだ方がいいのなら、 そう、しましょう。保食神(ウケモチノカミ)を頼む者達よ」」

アマテラスの何かを含めたその言に、使者を含め、古参と思われる者達が皆 震えあがり、キョウジがそれを見て皮肉気に口角を上げる。


『アマテラス神。相当にお怒りになっておられるな』
くっくっと笑いながら、ゴウトが愉快そうに言う。
「何のことだ?……もう一人(・・・・)?」

『お前は知らぬか。ライドウ。裏の歴史では、保食神はツクヨミ神に殺されている』
「おまけにウケモチノカミとウカノミタマは同じモノと見なせるぜぇ」
「……ということは……」

「『てめぇら(・・・・)皆殺しに されてぇのか(・・・・・・・・・・)?』って 言ったんだよ。あの神さんは」
あの優しい悪魔に分からないようになぁ、とキョウジも楽しそうに哂う。

「それ、古事記では俺がやったことになってるけどな。オオゲツヒメ相手によ」
「スサノオ」
「日本書紀じゃ、兄者がやったことになってる。知らないやつのほうが多いけどな」
……にしても、あれだけ怒りまくった姉者は久しぶりに見るぜ。
怖いぞ〜、俺は知らねぇぞ〜。と嬉しそうに笑うスサノオをライドウは呆れたように見上げた。


「えっ……と。いいかな、アマテラス?」
「「はい」」
ガタガタと震える人々を見かねたか、シュラが助けに入る。
「元々は、俺の世界じゃないところに俺が来たのが悪いんだし。もうお互い様ってことでダメかな?」
にこり、と笑いかけられて、ヤタガラスの面々が呆気にとられる。
「騒がしちゃって、ごめんね。もうちょっとしたら、また居なくなるから。少しだけ見逃して」

何と甘い!
そう言いたげな山のような視線をあっさりと受け流したシュラに、ダメかな?と瞳を覗き込まれて。
「分かりました」
ヤタガラスの使者は視線を逸らし、俯いて、それだけを返した。



◇◆◇


「じゃあ、ホントにありがと。アマテラス。クロウ」
「「いえ。久しぶりに貴方様に会えて、わらわも嬉しゅう……」」
「もったいないお言葉です。シュラ様」

別れを惜しむシュラの頬を、光量を落としたアマテラスがふわりと撫でる。
「「更に強く、美しゅうなられましたな」」
そ、そう?と照れるシュラには聞こえないように。
(おいたわしい、こと。どれだけ、傷つかれたのか)
と、ひっそりとアマテラスが呟く声が、ライドウの耳に届いた。


「では、姉者も達者で!」
「あなたも……。乱暴は、ほどほどにするのですよ!」
あちゃー、また怒られたぜ。と頭を抱えるスサノオを放置し、アマテラスはライドウに微笑みかける。
「これは、手に負えぬ乱暴者ですが、どうかよしなに」
「は」
軽く頭を下げて礼を取るライドウに、更に囁きかける。
「主様のことも、よろしく頼みましたよ」
驚いて顔を上げるライドウににこりと笑んで、アマテラスは再びシュラの元へ飛び、そしてしばらくの後、 黒い翼のヤタガラスと共に姿を消した。



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いろいろやらかしましたが、……後悔はしていない!(笑)
でも、伊勢神宮にはもう一回、お参りしてきます。(小心者)
ちなみにどうでもいいことですが、ウチのシュラくんはヤタガラスをクロウと呼びます。