「へぇ、じゃあ、すっきり片が付いたんだね〜」
はー良かったー。もうもう、心配でいてもたってもいられなかったんだよー。と安堵の溜息をつく鳴海を見ながら、ゴウトとライドウもやっと現実味を帯びた「平和」に溜息をつく。
「で、でも、さ。あ、あのヒト、誰?」
こわごわと小さい声でライドウに聞く鳴海に。
「……あぁ?俺のことかあ?」
ヒソヒソ話は大嫌ぇなんだよ、と、ソファで寛ぐ、着流しの男が毒づく。
「こら!鳴海さんに絡むな、キョウジ!大体、あんたが無理やり着いてきたんだろ!!」
いい加減に自分の家に帰れ!とシュラに怒鳴られて頭を掻く彼に、普段の面影は無い。
「なあ、帰るからさ。いいかげん、お前の名前、教えろよ」
「あんたには教えない!」
「教えるまで、帰らねぇぞ」
キチ。「……そろそろ死にたいようですね、キョウジ」
「あ、おい待て、ライドウ。それはダメ!」
……要はあの後。
シュラの名が欲しいと強請るキョウジと、誰があんたに教えるか!と突っぱねるシュラと、
ええい、いざとなれば
この傾奇者を、たたっ斬ってと殺気を滾らせる
ライドウと、
いや待てそれはまずい、止めろライドウ!と焦るシュラと。
……それを呆れ半分、諦め半分で黙って見ているゴウトで探偵社までたどり着いたのだ。
「なあ。さっきお前言ってただろ。『もうちょっとしたら、また居なくなるから』って」
その言葉にライドウがピクリとする。
「居なくなる前に、名前ぐらい教えてくれたっていいだろ?」
「……さっきから、他の人が何度も呼んでるだろ」
「こういうのは、お前の口からじゃねぇと意味ねぇ、ってことぐらい分かってるくせによぉ」
食い下がるキョウジにシュラが諦めたような溜息をつく。
「じゃあさ。交換条件」
「なんだ」
身を乗り出すキョウジの前で、シュラはピクシーを呼び出してみせる。
「なんだぁ。ただのピクシーじゃねぇか。こいつが何か……・・何だとぉ!」
うふふ。と笑って宙返りをする彼女は、もちろん古き友のピクシーだ。
「何だ、この能力値は!おまけにメギドラオン持ちだと!!」
「さすがにキョウジ。一目で分かったね」
にこり、としたシュラは更にキョウジにきついインパクトのある一言を与えた。
「あんたがメギドラオン持ったピクシーを仲魔にできたら、俺の名前教えてあげるよ」
それまで、
がんばって、
愛情もって、仲魔を育ててね♪
そのシュラの爽やか過ぎる笑顔に一言も返せず固まるキョウジを見つつ、
ざまをみろ、と彼らしからぬ罵倒の言葉を胸で呟きながら、ライドウはひそりと笑んだ。