Doppelgänger 2




「では、あらためまして。あっちのライドウの……友達の……カオル、です」
「我は十四代目葛葉雷堂。これはお目付け役の」
『業斗だ』

「さっきはすみません。てっきりまた大変な相手と、勝手に戦ったのかと思って」
「……カオル、殿は」
「あ、カオルでいいです」
「いや、初対面の女性を呼び捨てなど」
「……ええと。はい。雷堂、さんに、お任せします」
何かを言いよどんだように俯く少女に、雷堂の心が微妙に動く。

「雷堂、で良い」
「あ、でも、ライドウと区別できないし。……初対面だし」
困ったように笑う少女につられて、雷堂もくすりと笑う。
「では、君のいいように」

『カオルは、デビルサマナーなのか?』
「え?……いえ。あの、何と言っていいのか」
「フェンリルを従えるほどの能力で、それ以外の何だと?」
「〜〜〜っ。あの、事情があって、私からは詳しく言えないんです。またライドウに会った時にでも、聞いてもら」

「主様!お探ししましたよ!!」
「やーっぱ。フェンリルんとこに遊びに来てやがったかぁ」

「わ、リ、リン。ロキ」
『三体召喚?!』
「すごいな。可能なのか……」

突然の2体の悪魔の登場により、各々が全く違う観点で驚き慌てるカオル達だった。


◇◆◇


「では、こちらは別の時空の方々なのですね」
「ぱられるわーるど、ってヤツかぁ。面白ぇなぁ」

同じく、雷堂達を見て怪訝そうにしたリンとロキがカオルの説明に納得する。

ちなみに、ロキは雷堂の顔を見て、不穏な言葉と共に大笑いした後だ。
(どこの女に引っかかれたんだぁ?ライドウ!前から、いつかやられると思ってたんだよ。
俺のご主人様以外には人非人の薄情者の不感症だからなぁ、お前!)

「……人非人の薄情者は、まだ分かるとして……」(←……分かるのか!)
(不感症とはどういうことだ!ご主人様ってことはこの子のことか!?いったいお前、そっちで、何をやらかしてるんだライドウ!)
……おかげで、こっちの雷堂はさっきから頭がいろいろと沸騰中だ。

『しかし、大したものだな。カオルとやら』
「い、いえ。そんなことないです。業斗さん」
黒猫に返事しながら、カオルと呼ばれていることにきょとんとしたリンとロキに目配せをするシュラである。

『二体召喚はこちらも可能になりつつあるが、三体とは』
「……うむ。まったくだ。どのような修行をしたか、聞いても良いか」
やっと頭の温度が人肌程度になった雷堂が会話に加わる。

「しゅ、修行って、言っても。……はじめから、できたから」
『ぬう。生まれ持っての才能か』
「まさしく、天賦の才だな」

〜〜〜。いや、もう、だから。うう。ヘタに本当のコトも言えないし。誰か助けて〜。

心底、困って下を向くカオルの姿が、傍目からは慎み深い美少女が照れて俯いているようにしか見えないのはお約束だ。

もーこんなことなら誰かと戦ってる方が100倍マシ!適当な相手、出てこないかな〜!
そのシュラの祈りが天に(地の底に?)通じたのかどうか。

ドガガーン、という地響きと共に、雷堂には聞き覚えのあるダミ声が響き渡った。

「やぁっと見つけたぞ〜!さっきは間違えて不感症の方に行ってしまったが、こんどこそ俺のギンギンの突きで昇天させてやる〜!!」

『マーラ!』
「また、こいつか……。なんでまたこんなときに」
ぽかんと口を開けたまま、呆然と完全体マーラを見るカオルの方を見やりながら、雷堂は心の底から溜息をついた。


……一方、こちらはマーラさん曰く「不感症の方」。

「くそっ、逃げられたか」
『思いのほか、逃げ足の速いやつだな』
「追うぞ、ゴウト!ヤツは混乱させたままだ。他に被害が及ぶ可能性が高い!」
『うむ。確か、そちらの時空に逃げ込んだはずだ』

ドカドカとアカラナ回廊を移動したライドウとゴウトの目に、鏡写しのようなもの達が映る。
「……っ!雷堂?……やはり。諦めてなかったわけか。マーラ!」
『おい、ライドウ!あれは』
「なっ!!シュラ?!どうして、ここに!」


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Doppelgängerについては詳しいシュラなので、
念の為、差し障りの無い人間名を教えたと。