刀は、おそらくは役に立つまい。
支配下に下って久しいコレは、己が主の命を奪うことを拒むだろう。
時間の無駄は避けたい。
ならば、仲魔は。
……考えるのも無駄なこと。仮にそれで望み叶ったとて、この手段を使ってしまっては。
たとえ追いついても、彼は。それを仲魔に強要した僕を、永遠に拒む。
――― では、コレは。
『やめろ、ライドウ!』
己の持つうちで、唯一の、魂の篭らぬ武器。
――― コルトライトニング。
「……なるほど、故に、我らは多様な武器を持つわけか」
以前に、その身一つを頼りとして戦う、あの潔いほどの彼の姿を見ながら、ふと思った疑問の答え。
「弱き身には、様々な安全装置が必要、と」
その皮肉な正答にどこか安心しながら、微笑み、弾を充填する。
これなら、後を、追える。その行程は違えども、必ず、たどり着いて、みせる。
『待て、ライドウ!それでは、追いつけぬ!!』
安易な自殺者の魂は、次の転生までに時間がかかる。その生を自ら捨てたモノである故に。
優秀なる後継が、それを知らぬはずも無いことを承知で、ゴウトは叫ぶ。
「だが、他に、方法が無い」
時間がかかる、というのならば、一刻も早く、追わねば。追いつかない。
「それに、たとえ転生が叶わずとも」
菊花の契の譬もある。魂だけなら、必ず、追いつける。
二度と、触れ合えることすら叶わなくとも、傍に居られれば。それで。
銃を構えながら、嬉しげにさえ微笑むライドウに、もはやゴウトの声が届くはずもなく。
ああ、コレのダブルアクションを、これほどまでに感謝したことは無い。
と。
撃鉄を起こす時間すら惜しむライドウは、己のこめかみにその心地よい冷たさを押し当てた。