――― 断末魔のような、悲鳴が響く。
その甘い悲鳴が自らの咽喉から放たれていることを、耳から知覚しながら。
ああ、やはり、「私」は、この悪魔召喚師に、殺されるのだ、と悪魔は思う。
「私」は、それでも、いい。救われる。でも、残されるお前は、と悪魔は憂う。
この美しすぎる「ヒト」が、「人」として、どこか欠落しているのを、悪魔は知っていた。
その欠落ゆえに、こんな自分などに、執着するのであろうことも。
それでも。
あの、全てが濁っていく、あの紅い赤い壊れた、世界で。
この、美しいヒトを見なければ、己がとっくに破滅を選んでいたことも、悪魔は分かっていた。
「私」が世界の創造主だと言うのなら、この男は、その唯一神。
故に。
心は疑いようも無く、この男に帰属するけれども、この身体に絡みついた鎖は。
――― この紋様を刻んだ、あの御方は。けして、それを、許すまい。
どうすれば、この男の欠落を補ってやれるのか。
どうすれば、この男の本当の幸せを与えられるのか。
どうすれば、この男の、自分への執着を、消してやれる、のか。
分からないままに、ここまで来て。
分からないままに。
殺される、のか。
放つ光が、叫ぶ声が、その快楽のおぞましさを語る。
愛しいものが狂ったように悶え苦しむ様を平然と見ながら、男はその舌と腰と指の動きを止めない。
どれほどに高貴なモノでも、魔力を誇るモノでも、この快楽に落とし込めば、同じこと。
頃合を見て、堕ち行く言葉を聴きたくて、絡めた舌を解放した男は、微笑んでその言葉を待つ。
「……ライ、ドウ」
「はい」
けれど、開いたその赤い瞳は、彼が望んだどの欲望の色も映すことは無く。
ただ。驚いたように、その瞳孔を少し開いて。
動かすのも辛いであろうに、力の入らぬその手をライドウの頬に優しく押し当てて。
「泣かないで。ライドウ」
それだけを唇に残して、そのままカクリと気を失った。
その死んだようにしなだれる、手折られ捨てられ、踏みつけられた花のような悲しさに、
自らが泣いていたことにすら気づかなかった、愚かな男の心は悲鳴をあげる。
それは。何度も見た悪夢。
己が、この悪魔を殺してしまう夢。
愛しくて、愛しすぎて、他のものに奪われるぐらいならと、愛しつくして、殺してしまう、そんな。
――― それは、夢であったはずなのに。