「許して、ください」
聞いているだけで辛くなるような、声が、雨と一緒に、落ちてくる。
「目を、開けて」
……さっきまで、鬼畜モード全開だったくせに、何だよそれ。反則。おまけに。
「……泣くなって、言った、のに」
優しく返す声は少年の色。
呆れたように溜息をつく、そのしなやかな身体に かきついて、すみません、と、また涙を落とす
ライドウを見て、再度シュラは溜息をつく。
(泣きたいのは、俺のほうだろ。……無茶、しやがって。こいつ)
「でも、何となく、分かった」
「?」
「お前が怖がっていたコト」
確かに怖すぎ。殺されるかと思った、と笑われて、ライドウの顔が青くなり、赤くなる。
「……すみません」
「いや、もう一つも、よく分かったし、お互い様ってことでいいよ」
「もう一つ?」
「お前が俺を嫌ってなんかいない、ってこと」
……それはもう、嫌ってほどに。
「黙って帰ろうとして、ごめんな」
あと、気持ちを疑ったのも、ごめん。
優しい言葉にまた涙が出る。
あーもー泣くなって。と、
ポンポンと肩をたたく彼の手の優しさに、また。
僕は、貴方に出会うまで、泣いたことなど無かった、のに。
「で、どうするの?」
暫しの後、困ったような声でシュラが尋ねる。
「どう、とは?」
「え、と。全部いるって言ってたけど、
……まだ、欲しい?」
何の迷いも泣く、当然のようにライドウが肯くと、シュラの顔が微妙に引きつる。
(……そう答えるだろうなぁ、と思ってはいたけど。コイツ、本当に人間か?どんな体力してるんだ?
葛葉一族って皆こんなの? こんな奴ばっかり居る「里」って、一体……。
うわ。想像するだけで怖い。魔界より怖いって、何ですかソレ)
頭を抱えたシュラを見ながら、悲しそうにライドウが問う。
「嫌、ですか?」
「うーん。まあ、ここまでくればもう、何だ」
毒を食らわば、何とか、って感じ?
諦めたようにつぶやくシュラのあまりな表現に、ライドウの眉根が寄る。
「……僕は毒ですか?」
「うん。猛毒。触るな危険。もう、半径1m以内に近寄るだけで致死レベル?」
そっか、それで、そんな見た目なんだな。毒のあるヤツって異様に綺麗だったりするもんな。
自然界ってよく出来てるよなー。
嫌味を直球で返されて、固まるライドウを見て、シュラが笑って掠めるだけの口付けをくれる。
滅多に(特に平時の)シュラからはもらえぬ、その感触にライドウが赤くなると。
ほら、これだけで、こうなるのに、何で、あん時は、ああなるんだよ。この詐欺師。と
シュラがぼやき。
また、すみません、と下を向いたライドウに、いいよ、俺も嘘吐きだからと、あっさりと白状し。
嘘吐きと詐欺師はどっちが罪が重いんだ?
とりあえず、今は似合いってことでいいよな、と、ライドウを上目遣いで見つめて。
んじゃ、後は詐欺師に任せたから、よろしく!ただし、お手柔らかに、と。
どこか照れたように。
彼は笑った。